東日本大震災アーカイブ

「霞が関」の都合(2) 用地交渉 人材難 国交、出向6人だけ 各省庁の支援に限界

相馬市と福島市を結ぶ115号国道バイパス「相馬福島道路」では国土交通省磐城国道事務所職員らが現場確認に当たる=相馬市

 「人員を増強するなど、できることは全てやる。(用地取得で)行き詰まっているところを解消していく」。今月5日の閣議後の記者会見で環境相の丸川珠代は難航している中間貯蔵施設の用地交渉を加速させるため、あらゆる手段を講じると強調した。
 自然環境保護や地球温暖化対策を担い、用地交渉にたけた人材が皆無に等しい環境省は関係省庁に交渉経験のある職員を出向させるよう協力を求めてきた。しかし、道路整備など公共土木事業を所管する国土交通省から出向された用地担当職員は6人にとどまる。
 国交省の用地取得を手掛けている職員は現在、約1900人を数える。それでも、省内からは「中間貯蔵施設のため、さらに応援を出すのは難しい」(土地・建設産業局)との見方が出ている。

 国交省は用地担当職員を全国の地方整備局などに配置しているが、長引く景気低迷のあおりなどで公共事業が減少し、現場の第一線で業務に当たっている人員を削減してきた。
 ところが、東日本大震災以降、復興に伴う公共事業が増大した。平成32(2020)年の東京五輪・パラリンピック開催も決まり、用地取得が必要な業務は急増した。東北地方整備局は他地域から職員の応援を受けて対応しているが、それでも人員は足りないという。一部業務は民間事業者などへの委託でしのいでいる。

 環境省は用地取得を加速させるため、福島環境再生事務所の用地担当職員を28年度に現在の75人態勢から約100人に増員する方針だ。他省庁からの十分な支援が見込めない中、これまでと同様に県や民間企業の退職者の任期付き採用などを検討している。用地交渉の加速化につながるだけの経験者をどの程度確保できるかは現時点で見通せない。
 中間貯蔵施設チーム次長の高村裕平は嘆く。「単純に数だけ増やしても効果は得られない。用地取得に精通した職員が欲しい」。現場では厳しい交渉が続いている。(文中敬称略)

カテゴリー:「3.11」から5年-復興を問う