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【震災から5年】「避難区域再編」 住民の帰還 どう進める

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示区域をめぐり、政府は昨年6月、平成29年3月末までに帰還困難区域以外の居住制限、避難指示解除準備両区域を解除する方針を示した。県内ではこれまでに楢葉町と川内村、田村市都路地区の避難指示解除準備区域が解除されている。今後、解除される市町村を含め、住民帰還と地域づくりをどう進めるかが課題となっている。
 
 ■楢葉、川内、都路は避難解除
 

 原発事故に伴い、県内で避難区域が設定されている市町村は【図(1)】の通り。双葉郡を中心とした9市町村となっている。このうち、南相馬、川俣、葛尾の3市町村は帰還困難区域以外の地域について今春の避難指示解除を目指し、準備を進めている。
 県内ではこれまで、楢葉町で27年9月5日、川内村で26年10月1日、田村市都路地区で同年4月1日にそれぞれ避難指示解除準備区域が解除された。
 南相馬、川俣、葛尾の3市町村は昨年8月31日に居住制限、避難指示解除準備両区域で「準備宿泊」を開始。今月末まで実施する。各市町村は準備宿泊と並行して政府の原子力災害現地対策本部と協議し、除染の実施状況などを見極めながら正式な解除時期を決める方針だ。
 富岡、浪江、飯舘の3町村は帰還困難区域を除き、28年度末から29年度初めにかけて避難指示の解除、帰町を目指す。
 
※避難指示区域 東京電力福島第一原発事故に伴い、政府が被災住民に避難を指示した区域。放射線量に応じて(1)原則立ち入り禁止の「帰還困難区域」(年間被ばく線量50ミリシーベルト超)(2)日中の立ち入りが可能な「居住制限区域」(同50ミリシーベルト~20ミリシーベルト超)(3)帰還に向けた環境整備を進める「避難指示解除準備区域(同20ミリシーベルト以下)-の3つの区域に再編された。
 
 ■航空機モニタリング事故7カ月後比線量65%減
 
 原子力規制委員会は原発事故による空間放射線量の変化を確認するため、日本原子力研究開発機構(JAEA)に委託し定期的に航空機モニタリングを実施している。
 事故発生の1カ月後から54カ月後までの避難区域の線量の推移は【図(2)】の通り。放射性物質の自然減衰や雨による放射性物質の移動などの影響で比較可能な事故後7カ月時点のデータと比べ、放射線量は65%減少した。
 
 ■復興「見える形で」 楢葉 古書店営む岡田さん期待
 
 平成27年9月5日の避難指示解除から5カ月余りが過ぎた楢葉町。町職員や楢葉町特別警戒隊が町内を見回り、帰還した町民の数を把握しているが、1月4日現在、247世帯421人と全人口の6%程度にとどまる。
 楢葉町山田岡で27年9月から古書店岡田書店を営む岡田悠さん(37)は昨年12月、妻かおりさん(40)といわき市のアパートから町内に移り住んだ。もともと、祖母の家だったこともあって、近くの住民が声を掛けるのに時間はかからなかった。「これ買ってきたから食べな」。飼い犬と散歩中の男性が店の戸を開けてビニール袋を差し出す。「いつもすみません」。悠さんが笑顔で受け取る。
 店も軌道に乗ってきた。開店当初は客が一人も来ない日もあったが、今は毎日、店を訪れる客は絶えない。顔なじみになったお客さんと本の話に花を咲かせるようになった。
 ただ、生活面での不便さは否めない。食料品や日用品などは、いわき市でまとめ買いする。自宅近くの住民もまだ少なく、「夜は真っ暗。できるだけ出ないようにしている」と話す。
 それでも、近くに県立の診療所が開所するなど安心材料も出てきた。「もう少し復興が目に見えるようになれば、戻る町民も増えるのでは。商売ももっとよくなる」と期待している。
 
 ■介護施設開所働く場に 川内 猪狩さん、古里回帰
 
 川内村は平成24年1月に「帰村宣言」をし、同年4月に役場機能を村内に戻した。村東部は26年10月に旧避難指示解除準備区域が解除された。政府は、現在、避難指示解除準備区域になっている荻、貝ノ坂両地区も今春をめどに解除する意向を示している。
 人口約2700人のうち、帰村したのは6割の約1600人。このうち50歳以上が7割を占める。昨年11月、社会福祉法人千翁福祉会(佐川文彦理事長)が運営する「特別養護老人ホームかわうち」が開所した。村に戻りたくても戻れなかった高齢者と雇用先を求める村民の思いをつなぎ、地域住民との交流を生み出す場になっている。
 施設で働く介護支援相談員猪狩幸子さん(57)は茨城県へ避難後、郡山市の仮設住宅に入居した。村を離れて初めて、豊かな自然と穏やかな村民に囲まれた村の魅力に気付いた。なじみの薄い土地で暮らす不安も相まって古里への思いが募った。施設建設の話を聞き、真っ先に履歴書を送った。
 現在、短期入所を含めて77人が利用している。入所する妻に会いに毎日訪れる男性や、施設訪問をきっかけに顔なじみの人と再会した入所者もいる。猪狩さんは「利用者の笑顔が増える様子が間近で見られて何よりうれしい」と話す。
 
 ■お菓子で活気を 渡辺さんが挑戦 都路
 
 田村市都路地区は平成23年9月に旧緊急時避難準備区域、26年4月に避難指示解除準備区域がそれぞれ解除された。帰還者数は27年11月末現在、避難指示解除準備区域だった114世帯335人のうち、77世帯204人と約6割。都路町全体では923世帯2598人のうち、688世帯1696人と約65%に上る。
 他の解除地域に比べて住民の帰還が進んでいるが、高齢化が進む地域では子育て世代を含めた若者の帰還や定住が課題だ。
 都路町商工会などでつくる実行委員会は、地域産業の活性化とともに若者や女性の雇用機会を生み出そうと特産品「都路たまご」などを使用した菓子作りを進めている。3月には菓子店「都路スイーツ 結(ゆい)」が田村市都路町岩井沢にオープンする予定だ。
 岩井沢地区に住む渡辺柚香(ゆか)さん(21)は郡山市の専門学校を卒業し、会津若松市の写真館に勤務していたが、「これまで学んできたデザインなどを地元で生かしたい」と菓子店に勤める予定だ。
 ただ、インターネットのホームページのデザインなどの広報分野には自信があるが、菓子作りは初心者。先輩の指導を受けながら腕を磨き、開店の準備を進めている。
 「都路スイーツを発信して古里を盛り上げたい。人気が出て若者の働く場所が増えれば、同世代の人も帰って来ることができる」と夢を描く。

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