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【震災から5年】「環境再生」 森林保全へ範囲拡大 「里山」も除染対象に

 政府は生活圏から20メートル以内と日常的に人の出入りがある場所としてきた森林除染の範囲を、「里山」にも広げる方向で調整している。県や林業関係団体などから要望を受け、方針を改めた。しかし、里山に明確な定義はなく、どの程度、エリアが拡大するかが今後の焦点となる。
 5日に初会合を開いた復興庁と環境省、農林水産省による「福島の森林・林業の再生のための関係省庁プロジェクトチーム」で、3省庁の大臣が里山を森林除染に含む方針を確認した。面積を広げる範囲は県や市町村と協議して決める。
 今後、環境省による除染と、林野庁の林業再生事業を組み合わせるなどして実施する事業を取りまとめる。除染作業で落ち葉や堆積物を取り除く際、土砂の流出を防ぐ効果的な手法も探る。一方、住民が日常的に立ち入らない山林については、放射性物質の低減対策を検討するという。
 丸川珠代環境相はプロジェクトチームの初会合で「除染だけでは解決できない課題を他の省庁と連携して乗り越える。林業や里山の再生に対する考え方を地元の思いを踏まえて再検討したい」と強調した。
 環境省は昨年12月、民家や農地から約20メートルの範囲と日常的に人の出入りがある場所以外は除染しない方針を示した。森林から生活圏に影響を与える放射性物質の飛散は確認されず、落ち葉を除去すると土砂の流出が懸念されると説明した。これに対し、県や市町村、林業関係団体などは再考を求めてきた。
 森林除染の範囲を里山に広げる国の方針について、県南地方の林業関係者は「地元の意見がどこまで反映されるのか。期待を裏切らないようにしてほしい」とくぎを刺した。


■住宅除染ルポ 郡山 年度内終了に めど 汚染土壌の搬出が課題に
 郡山市は今年度内で一般住宅の除染を終える見通しが付いた。1月中旬時点で全体の8割超に当たる約7万8000件が完了している。最終段階を迎えた作業の様子をルポする。
 市内東部の住宅街。片隅にうっすらと雪が残る庭で、重機を使った覆土作業が進められていた。表面を5センチほど削り取った後に、作業員5人が棚倉町産の真新しい砂利を敷き詰めた。放射線量は作業前の毎時0・33マイクロシーベルトから、毎時0・11マイクロシーベルトまで低下した。
 市は平成23年度以降、「市ふるさと再生除染実施計画」に基づき比較的線量の高い地域から住宅除染を進めてきた。
 住宅や学校などの除染で出た汚染土壌の大半は敷地内に現場保管されている。27年12月末現在で約48万立方メートルに上ったが、パイロット(試験)輸送で運び出されたのは約1300立方メートルにとどまるという。
 市は汚染土壌の搬出に向け市内9カ所に積込場を設置する。各地で地質調査を進めているが、環境省は依然、本格輸送の計画を示していない。市の担当者は「『(汚染土壌を)自宅から持っていってほしい』との声が頻繁に寄せられている。早く輸送が始まるよう願いながら準備を進めるしかない」とため息をついた。
 順番が後回しになった道路除染の完了率は2割以下にとどまる。今年度中の完了を目指していたが、28年度以降にずれ込むのは確実だ。(郡山本社報道部・佐藤紘亮)


■放射性物質拡散恐れで放置 川底の土砂撤去へ
 原発事故に伴う避難区域を中心に、約70の県管理河川で川底に大量の土砂がたまっているのが確認された。県は水量が増えれば氾濫の危険が出るとして、降水量の増える梅雨時期までに取り除く方針だ。
 県は原発事故前まで、管理している河川で定期的に土砂を除去してきた。しかし、原発事故後は放射性物質の拡散を防ぐため毎時0・23マイクロシーベルト以上の放射線量が土砂表面から測定された場合、撤去を見送ってきた。流れが緩やかになるカーブや川幅が広がる場所に多く堆積しているという。
 大雨によって河川の水があふれる恐れがあとして、川内、双葉、葛尾、飯舘の4町村は県に対策を講じるよう要望した。県は環境省に土砂の除去を求めたが、同省は「水が放射線を遮り、住民の健康に影響を与えない」と応じていない。このため県は独自の財源で土砂を撤去する。
 県は1月から対象河川で土砂の堆積量や放射性物質濃度を調査しており、結果を基に除去する場所を決める方針だ。川の中から除去した土砂の保管法などを環境省と協議し、処理費用を負担するよう求める。
 一方、県はため池約50カ所で水底の土壌を除去した。このうち、約20カ所で地元の仮置き場に空きスペースがないことなどから、除去土壌をフレコンバッグ(除染用収納袋)に入れてため池の脇に置いている。


■帰還困難区域の除染 今夏にも方針決定 環境省
 環境省は今年夏にも、帰還困難区域の除染方針を決める。本格的に除染を進める方向となった場合、平成29年度に作業が始まる見通しだ。
 同区域は現在までに復興拠点や幹線道路など一部で作業が行われているが、エリア全体の見通しは示されていない。環境省は政府による区域見直しなどと連動し、除染の在り方を検討する。井上信治環境副大臣は1月、福島民報社の取材に対し「帰還困難区域の再編などの方向性を踏まえ、除染について地元の自治体と相談しながら計画を作っていく」と述べ、29年度予算編成を見据えて今年夏にも方針を決める意向を示した。

カテゴリー:震災から5年

住宅除染で庭に砂利を敷き詰める作業員=郡山市

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