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【震災から5年】「福島第一原発 廃炉」 過酷なデブリ調査

福島第一原発建屋内の階段を再現した設備。企業関係者がロボットの性能を確認する

 ■地下階はカメラ投下に
 
 溶融燃料(燃料デブリ)の調査に向け、昨年4月10日から20日にかけ、1号機の原子炉格納容器内にカメラや放射線測定器、温度計を搭載した小型ロボットが初めて投入された。
 最初に投入したロボットは調査開始から約3時間後にトラブルで走行不能となったが、最大で毎時9・7シーベルトの放射線量を観測。格納容器内が過酷な環境にあることをあらためて示した。
 さらにロボットは周辺をカメラで撮影。デブリがあるとみられる地下階の調査で、ロボットを投入する予定の経路に落下物などの障害がないことも判明した。
 国と東電は地下階の水中調査を年度内に予定していたが、ロボットを水中に投入すると、格納容器内の堆積物が舞い上がりカメラの視界が確保できなくなることが分かった。このため、一階部分の足場になっている金網の隙間から線量計の付いた水中カメラを降ろし、観測した放射線量からデブリの状態を推定する。機器開発などが必要なため、調査開始時期が平成28年度に延期された。
 また、東電は1月、2号機で今年度中に予定していたロボット調査の工程を見直すと発表した。ロボット投入口付近の放射線量を目標値まで低減できないためで、調査実施は28年度以降になる見通しとなっている。
 
 ■前線拠点JAEAモックアップ施設 模型、仮想空間で検証
 
 楢葉町にある日本原子力研究開発機構(JAEA)の楢葉遠隔技術開発センター(モックアップ施設)では、4月の本格運用に向けて試験棟の工事が進められている。東京電力福島第一原発の廃炉に向けた技術研究の前線拠点だ。
 センターの試験棟内ではドーナツ形をした原子炉格納容器下部を八分の一の大きさに切り取った形の模型を建設中だ。福島第一原発2号機格納容器の下部分を再現している。JAEAと国際廃炉研究開発機構(IRID)は廃炉に向けた作業手順をこの模型を使って検証する。
 この他、原発建屋内の階段を再現した設備、水中ロボットの実証試験を行う円筒型の水槽、ロボットの動きをカメラを使って数値化して開発に役立てるモーションキャプチャがある。ロボットを開発する企業や大学などは3月末まで無料でこうした設備を利用できる。試験棟に隣接する研究管理棟内にはバーチャルリアリティー(仮想現実)システムがある。原子炉建屋内の様子を立体的に見ることができる仕組みだ。
 
 ■IRID理事長 剱田裕史氏に聞く 状況伝え住民に安心
 
 東京電力福島第一原発では廃炉に向けた作業が進んでいる。国際廃炉研究開発機構(IRID)の剱田裕史理事長(60)に現状や課題を聞いた。

 -廃炉に向けたIRIDの取り組みは。
 
 「構内は確実にリスクが低減されている。全面マスク着用エリアの縮小、線量率の低減など環境、労働条件の改善も進んでいる。IRIDとしては溶融燃料(デブリ)取り出しという一番の目的に向けて工法の選定、装置の設計や実証を進めなければならない。安全、着実な廃炉に向けて東電や原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)と連携して取り組む」
 
 -デブリ取り出しをどう進めるか。
 
 「デブリの場所や量、性状の把握など、取り出しの前段階でやらなければならないことは多い。格納容器の調査、補修をするにも原子炉建屋内は線量が高く人が近づけない。遠隔装置の開発や除染が必要になる。一歩一歩着実に進めていくことが重要だ」
 
 -国内外の英知の結集も欠かせない。
 
 「国内外の大学や企業、研究機関と連携し、成果を活用している。海外を含む有識者から助言を受けて研究開発を進めている」
 
 -福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想とどう連携するか。
 
 「楢葉遠隔技術開発センターで格納容器の止水の試験を計画している。遠隔操作機器の開発や検証に活用できる。長丁場となる廃炉期間中に施設をどう有効活用できるか、関係機関と協議したい。他に整備が進められる施設についてもIRIDのプロジェクトと密接に関連するため連携を強化したい」
 
 -廃炉の状況が見通せないことが住民の不安につながっている。
 
 「一般の方々には廃炉作業の進捗(しんちょく)が見えないとか、遅いという印象を持たれると思うが、安全・着実に作業が進んでいるのは事実だ。研究開発や現場作業の状況をさまざまな形で住民に伝え、安心につなげたい」
 
 けんだ・ひろふみ 富山市出身。東京大工学部原子力工学科卒。昭和53年4月に日本原子力発電に入社した。取締役・東海発電所長兼東海第二発電所長などを経て平成25年6月から常務を務めている。同8月に国際廃炉研究開発機構(IRID)副理事長に就き、26年8月から理事長。60歳。

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