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【震災から5年】「福島第一原発 変わる現場」 地表面舗装で線量低減

1号機北側にある土手の斜面で行われているフェーシング。地面にモルタルを吹き付けている=2月5日

 福島第一原発の構内では、作業員が安心して働ける職場にするため、フェーシング(舗装)と呼ばれる作業が行われている。
 構内の地表面をモルタルで覆うことで周辺の空間放射線量を低減できるほか、雨水が地下に染み込むのを防ぎ、建屋に流入する地下水を減らすことができる。構内の樹木や植え込みの多くが伐採された。
 今年度内には予定している135万平方メートルのうち、9割超で完了する見通し。また、残りの約10万平方メートルについては廃炉作業の進捗(しんちょく)に合わせフェーシングを実施する予定だ。
 
■全面マスク 不要エリア拡大 
 東電は構内のフェーシングに伴い、全面マスク不要エリアを拡大させてきた。
 原子炉建屋周辺を除く構内の空間放射線量を毎時5マイクロシーベルト以下に低減させる計画を実行。平成27年度末の目標面積に対し25年度末で約40%、26年度末で約77%と広がり、現在までに目標を達成した。
 敷地内の約9割では、高濃度の粉じんが出たり、高濃度汚染水を体内に取り込んだりする危険性がある場合などを除き、防じんマスクやサージカルマスク(普通のマスク)の着用で済むようになった。半面マスクは全面マスクよりも音が聞こえ、体調悪化による顔色の変化などにも気付きやすくなり、作業員の安全管理につながっている。 


半面マスクや防じんマスクで作業をする作業員=2月5日

■大型ディスプレー 構内各所の線量を確認 
 作業員の構内への出入りを管理する入退域管理施設などには大型ディスプレーが設置され、構内各所の空間放射線量が確認できる。 線量を測定する「線量率モニタ」が、構内86カ所に設置してあり、ディスプレーに指で触ると最新の線量やこれまで測定したデータが表示される。現場環境を知る目安になっている。
 
■作業員 1日平均6460人 長期的確保が課題 
 福島第一原発で働く作業員数は1月が1日当たり平均約6460人で、12月時点の地元雇用率(協力企業作業員と東電社員)は約50%となっている。海側・陸側の遮水壁などの大型工事で作業員数は年々増加し、ピーク時の平成26年3月には1日当たり7450人にまで膨れ上がった。その後は大型工事が一段落し、減少傾向にある。ただ、今後、1~3号機で使用済み核燃料の取り出し作業が予定されており、再び増加が予想される。
 今後40年にわたる廃炉作業を着実に進めるため、地元などの協力企業が長期的に働ける環境づくりが課題だ。
 東電はフェーシングによる線量低減などの労働環境改善に加え、発注工事の約9割に随意契約を適用。事業者が計画的に労働者を雇用できるため、必要な人材の育成にもつながるとしている。
  
■福島復興本社 富岡中心部に移転 Jヴィレッジ 31年4月全面再開  
 東京電力はJヴィレッジ(楢葉・広野町)にある福島復興本社を3月末までに富岡町中心部の浜通り電力所に移す。
 Jヴィレッジ内にある同社の「復興調整部」「企画総務部」「福島広報部」に所属する約50人が移る。被災した住宅の清掃など復興推進活動の調整を担う「復興推進室」などは当面、Jヴィレッジに置く。
 浜通り電力所から福島第一原発までの距離は約10キロで、Jヴィレッジまでの半分となる。現在、居住制限区域内にある。
 一方、県は平成32(2020)年の東京五輪・パラリンピックに向け、Jヴィレッジを31年4月に全面再開する方針。Jヴィレッジの建物では現在、除染作業が進められている。
 
 ■原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事長 山名元氏に聞く 県内の人材育成 期待
 東京電力福島第一原発の廃炉は完了まで30年から40年の長期戦となる。着実に前に進めていくためには、作業に携わる人材をいかに育成していくかが最重要課題となる。原子力損害賠償・廃炉等支援機構理事長の山名元氏(62)に今後の展望などを聞いた。
 
 -現在の廃炉の作業環境をどう見るか。
 
 「フェーシングで空間放射線量が大きく下がり、一昔前よりもかなり良くなった」
 
 -廃炉を支える人材が枯渇するのではないか。
 
 「われわれも一番その点を危惧している。廃炉の作業は短距離走ではなくマラソンだと思っている。作業員の意欲と技術力を持続的に息長く継続できるようにしないといけない」
 
 -そのための具体策は。
 
 「まず大事なのは、東京電力の廃炉推進カンパニーが責任を持って廃炉を完逐できる事業体制を継続させることだ。同業の電力会社や原子炉メーカー、海外の関連企業などから人材の協力を得られる流れができるよう、東電が努力しないといけない。われわれも政府側から支援していく」
 
 -廃炉事業は後ろ向きの印象もある。
 
 「優秀な技術者が他の業界に流出しないために2つの点が必要だ。一つは原子炉メーカーなど廃炉に関わる企業が、技術的にも非常に挑戦的で、非常にやりがいのある職業だという意識を持って業務に当たらなければならない」
 
 -もう一つは。
 
 「産業界に人を送り出す大学や高専などで関係する技術を教えたり、卒業研究のテーマにしてもらうなど、やや積極的な後押しをする必要がある。文部科学省が支援する制度をつくり、県内では福島大や福島高専のプログラムが採択された。いずれ成果を出すと思っている」
 
 -機構と経済産業省資源エネルギー庁は4月、いわき市で福島第一原発廃炉国際フォーラムを開く。
 
 「できるだけ注目を集め、人材育成につながるようにしたい」

 やまな・はじむ 京都市出身。東北大大学院工学研究科原子核工学専攻博士課程後期課程修了。昭和56年に動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)入社。京都大原子炉実験所教授などを経て平成25年、国際廃炉研究開発機構理事長に就任。昨年9月から現職。62歳。

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半面マスクや防じんマスクで作業をする作業員=2月5日

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