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【震災から5年】「農業」 27年産米基準超なし 放射性物質対策が奏功

【グラフ(1)】

 県内の農業は東京電力福島第一原発事故に伴う風評に依然苦しめられている。農業産出額は事故前の水準を下回ったままだ。一方、昨年末までに全量全袋検査を終えた平成27年産米全てで放射性セシウムは食品衛生法の基準値を下回った。県などが国内外で県産農産物の安全をアピールする活動を続ける中、欧州連合(EU)が一部の輸入制限を緩和するなど明るい動きも出始めている。
 
 原発事故に伴うコメの全量全袋検査で、県が昨年末までに調べた平成27年産の1030万7119点全てで、放射性セシウムは食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル以下)を下回った。
 27年産は昨年末までに、検出下限値未満が全体の99・99%に当たる1030万6498点だった。基準値を超過した数は24年が71点、25年が28点、26年が2点で年々減少傾向にある。
 26年産の2点は県北地方の農家が自家消費用に生産したコメで、流通米が基準値を下回ったのは2年連続となる。
 県は県内の各JAなどと連携し、農家にカリウム肥料の散布、土壌の深耕・反転耕などを行うよう呼び掛けてきた。こうした取り組みが奏功し、セシウムの自然減衰が進んだことも検体が全て基準値を下回った背景にあるとみている。
 県は全国の小売・流通業者に検査結果を周知し、県産米の取引拡大を訴えていく方針だ。

 ■生産額回復足踏み
 
 農業産出額の推移などは【グラフ(1)】の通り。震災発生前年の平成22年は2330億円だったが、翌年には479億円減少し、1851億円となった。24年は2021億円、25年は2049億円とやや回復傾向にあったが、26年は1837億円と再び下降した。県は全国的に米価が下落したのに加え、県産農産物に対する風評が根強いためとみている。
 県内を代表する農産物の品目別価格は【グラフ(2)】の通り。コメは22年に60キロ当たり1万2507円だった。23年から25年までは全国的なコメ不足の影響で震災前年を上回ったが、26年は1669円安い1万838円となった。
 モモ一キロ当たりの価格は23年に222円となり、前年の半額近くまで落ち込んだ。24年は340円、25年は356円、26年は358円、27年は429円と回復傾向にある。
 一方、肉用牛は27年に震災前年を上回った。1キロ当たりの価格は22年が1708円だったのに対し、23年は442円安い1266円。24年は1359円、25年が1655円、26年が1685円と年を追うごとに回復、27年は22年より432円高い2140円となった。
 
 ■検査体制を強化
 
 県は食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超える放射性物質が含まれる食品を流通させないため、検査体制を強化し安全確認を徹底している。
 主食のコメは、県内全域で生産・出荷される全てを対象にした全量全袋検査を実施。基準を満たした米袋には検査済ラベルを貼付している。その他の農林水産物は出荷前に検査を受けており、基準値を超過した場合には品目ごとに市町村単位で出荷が制限される。
 一方、県は生産者団体などに検査機器の導入費用を補助している。
 
 ■県産和牛価格全国平均まで回復 安全確保策が評価
 
 原発事故後大きく落ち込んだ県産和牛の取引価格は全国平均と同水準まで回復している。9、10の両日、本宮市の県家畜市場で行われた競りの平均価格は一頭当たり77万4817円で、前年同月を17万7943円上回った。
 全農県本部によると、価格上昇の主な要因は全国的な出荷頭数の減少だが、県産の場合、品質向上も一因に挙げられる。さらに、原発事故による風評が続く中、生産者の安全確保に向けた取り組みが全国の購買者に評価されているという。
 取引価格の上昇は和牛を競りに掛ける繁殖農家にとって好ましいが、購入する側の肥育農家にとっては厳しい状況となる。全農県本部の担当者は「県産和牛の評価が高まるのはうれしいが、値段がどこまで上がり続けるのかは不透明だ」としている。

カテゴリー:震災から5年

【グラフ(2)】

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