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よみがえれ天王柿 美里で今秋出荷再開へ

天王柿の産地復活へ誓いを込める福田さん

 東京電力福島第一原発事故による風評で販路が閉ざされた会津美里町の天王柿(てんのうがき)の出荷が今年秋に再開する。生産量は震災前、目標に20トン届かなかった。再び100トンの目標に挑戦する。5年間も出荷できない状態が続き、一部の樹勢に衰えも見えるが、生産者は行政と連携しながら用途開発や販路拡大を進め、産地復活を目指す。


 天王柿は高田地域の農家約30戸でつくる会津高田天王柿生産組合が栽培している。県内唯一の産地だ。渋味が強く食用に適さないため、防水加工などに使う柿渋の原料として京都府の製造業者「三桝嘉七(みますかしち)商店」に全量出荷していた。会津身不知(みしらず)柿で知られるように柿栽培の技術が高い会津産は質が良いと評判だった。
 原発事故後の検査で放射性物質が検出されたことはない。製造業者は安全性に理解を示したが、県産を原料とする柿渋に買い手がつかなかった。たわわに実りながらも廃棄するしかない産地の現状を無念に思った製造業者は取引先を回り、事情を説明してきた。一社、また一社と購入先が決まり、需要を十分に確保できると判断した。今年秋から収穫した柿を全量買い取る方針だ。
 しかし、生産組合は当初、震災前のように年80トンの出荷は困難とみていた。再出荷に備えて枝の剪定(せんてい)や追肥を施してきた農家がいる一方で、高齢などを理由に手入れができなかった畑もあるためだ。
 生産組合の関係者らは今後の産地の在り方を話し合った。出席者全員の意見が「もう一度、頑張ろう」だった。年100トン出荷の目標を再び掲げた。この話を聞いた町も協力を申し出た。
 町は営農支援のため、補助制度創設の検討を始めた。さらに一社だけの出荷先を複数化しようと、県内の企業などに利用を促していく考えだ。
 さらに、用途開発の相談を持ち込んだ県ハイテクプラザは柿渋の新たな可能性を研究すると約束した。ポリフェノールを含むため、健康食品や化粧品などとしての活路も視野に入れるという。
 組合長の福田三郎さん(62)は「高齢の生産者が多く、出荷できない状況が続くと産地がなくなる恐れもあった。収穫した柿を販売できる喜びをかみしめ、これまで以上に質の良い柿を育てたい」と再起を誓う。間もなく剪定作業が始まる。

■柿渋の原料
※天王柿 渋柿の中で最も渋味(タンニン)が強い品種の一つで、柿渋の原料として用いられている。京都山城地方が主な産地。大きさはゴルフボールほどと小さく、完熟しても渋味が残り、生食用には不向き。柿渋は紙や布、木などに塗ることで強固にさせ、防水機能も持たせる。接着や防虫の効果もあり、用途は広い。最近では化粧品素材にも利用されている。

カテゴリー:福島第一原発事故

高い品質を誇る会津美里町の「天王柿」

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