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【震災から5年】「林業」 明るい兆し 素材生産量、震災発生時上回る 森林組合若手作業員が増加

製材品の表面放射線量を測定する県職員=郡山市

 東京電力福島第一原発事故によって広がった放射性物質は県土の7割を占める森林にも降り注いだ。あれから間もなく5年-。風評の影響などで落ち込んだ木材生産量は事故が発生した平成23年を上回り、栽培キノコの生産量が年々増えるなど県内の林業に明るい兆しが出始めた。今後は55市町村で続く野生キノコの出荷制限解除が課題となる。

 農林水産省の木材需給報告書によると、平成26年の県内の素材生産量(製材用・合板用・木材チップ用の合計)は65万5千立方メートルで、23年を1万9千立方メートル上回った。
 素材生産量の推移は、23年は63万6千立方メートルで前年より7万5千立方メートル(10・5%)減ったが、24年は64万7千立方メートル、25年は69万5千立方メートルと右肩上がりに増えた。
 県によると、木造仮設住宅と一般住宅の建築など復興需要に加え、バイオマス発電施設向け燃料用チップの需要が回復し、生産量全体を押し上げた。県産材に対する風評が徐々に和らいでいることも背景にあったという。
 ただ、26年は復興需要の落ち着きなどで前年を4万立方メートル下回った。県担当者は「今後はCLT(直交集成板)向けなど新たな出荷先の拡大に取り組んでいく」としている。
 一方、林業の担い手が増えつつある。県内16の森林組合の作業班で働く人員は、25年度は635人で、23年度に比べ105人(19・8%)増えた。年齢階層別では30~39歳が84人で、23年度より22人増加した。ただ、60歳以上が最も多く287人で半数近くを占めている。
 若手の作業員が増えている要因について、県森林組合連合会の担当者は「国の補助制度を活用して技術習得を目指す若者が現れているため」とみている。

 ■県産製材品は安全 表面放射線量基準値大幅に下回る

 県は県産製材品の風評払拭(ふっしょく)に向け、平成23年11月から表面放射線量調査を続けている。
 県産材を製材・出荷している全工場を対象にした27年6月から7月にかけての平均値は2cpm、最大値は41cpm(毎時0・001マイクロシーベルト相当)だった。県木材協同組合連合会(県木連)の自主管理基準値1000cpm(同0・033マイクロシーベルト)を大幅に下回った。
 これまでの測定値について、県が放射線防護に詳しい大学の専門家に確認したところ、「環境や健康に影響はない」とする見解が示されたという。
 林野庁と県木連は、県産原木の放射性物質検査体制を県内全域で整える方針。これまでに郡山市の木材市場と塙町の製材工場に非破壊式検査機器を試験的に設置した。今後、主要な原木市場や規模の大きな製材工場にも導入し、県内で1年間に切り出される原木約70万立方メートルの大半をカバーする。
 原木の樹皮には、放射性物質濃度の比較的高い土壌などが付着している可能性がある。今後、原発事故に伴う避難区域の解除などで営林活動が再開すると見込まれるため安全確認の取り組みを強化する。

 ■栽培キノコ生産上向く 厳格管理で「原木」出荷再開

 原木シイタケなど栽培キノコ生産量は、平成24年は3453トンで震災前年の半分程度に減ったが、徐々に生産が再開し、26年は4456トンとなった。県によると、シイタケやナメコの菌床栽培が拡大しており、裁培キノコ全体の生産量は今後さらに増える見込み。
 原木シイタケの出荷制限解除に向け、県は独自のチェックシートを策定し、厳格な生産管理を求めている。26年7月には伊達市の3農家と新地町の1農家が食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を下回り、出荷できるようになった。市町村一律ではなく、生産者単位での解除は県内の主要農産物で初めてだった。
 一方、県内55市町村に出されているマツタケなど野生キノコの出荷制限が解ける見通しは立っていない。
 政府は野生キノコから食品衛生法の基準値を超える放射性セシウムが検出された場合、原子力災害対策特別措置法に基づき、採取された市町村の野生キノコ全てを出荷制限の対象としている。
 林野庁は3年続けて基準値以下だった品目に限り解除する方針。3年目の検査では採取場所を増やした上、検体全てが基準値を下回った場合のみ自治体と協議に入るとしている。西会津町の野生ナメコ、会津美里町の野生ナメコとムキタケが昨年、2年目の検査をクリアした。

 ■今できることをやるだけ 野生キノコ出荷制限解除へ 北塩原村農業専門員菊地裕雄さん

 野生キノコの出荷制限解除を目指し、放射性物質検査を受けた北塩原村だったが2年目で「不合格」となった。村農業専門員を務める菊地裕雄さん(66)は「検査のハードルが高すぎる」とため息をつく。
 村は平成26年、初めて検査に臨んだ。5地点で採取したマツタケ全てで、放射性セシウムは食品衛生法の基準値をクリアした。しかし、翌年は五地点のうち、三地点で前年の数値を超えた。原因ははっきりしないが、前回に比べ形の小さな検体が多く含まれていたのが影響したのではないかと菊地さんは考えている。「安全性を証明するには何重もの検査が必要だ。だが、年々、数値を下げていくのは至難の業だ」と明かす。
 しかし、立ち止まってはいられない。地元生産者は出荷再開を待ち望んでいる。空間線量とマツタケの放射性セシウム含有量との関係を独自に調査するなど、再挑戦に向けた準備を進めている。マツタケの生育は気象条件により変化し、採れる量も少ない。毎年、検査で必要となる検体数を確保できる保証はない。それでも「今できることをやるだけ」と口元を引き締めた。

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