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【震災から5年】「林業」 民有林9割が利用可 伐採・搬出基準下回る県木連調査

 県内民有林の約9割が県の伐採・搬出基準(空間放射線量毎時0・50マイクロシーベルト以下)を下回り、利用可能であることが分かっている。
 県木材協同組合連合会(県木連)が原子力規制委員会公表の空間放射線量データ(平成26年9月1日~11月7日測定)を基に、初めて放射線モニタリング地図を作成した。県内約21万地点のデータから、民有林8万9666地点を分析した結果、88%に当たる7万8633地点が伐採・搬出できる毎時0・50マイクロシーベルト以下だった。会津地方や県南地方などの33市町村では基準値超えがゼロだった。
 一方、県の基準を超えたのは、浜通りや県北地方など26市町村の1万1033地点だった。原発事故で避難区域が設定された12市町村のうち、田村市と広野町を除く10町村で県の基準を超えた割合が50%を超え、大熊、双葉、浪江、飯舘の4町村は90%を上回った。富岡町と葛尾村は全て該当した。
 厚生労働省が原則として営林活動を行わないよう求めている毎時2・5マイクロシーベルト超の地点は1596地点で、全体の1・8%にとどまる。ほとんどが、年間被ばく線量が50ミリシーベルトを超える帰還困難区域内だった。

※県の民有林伐採・搬出指針 指定廃棄物となる1キロ当たり8000ベクレルを超える樹皮が製材工場などから出るのを抑制するため、平成26年12月に木材業者らに通達した。県の調査で、空間放射線量が毎時0.50マイクロシーベルト以下の森林では8000ベクレルを超える樹皮が確認されなかったため、伐採地が毎時0.50マイクロシーベルト以下であれば伐採・搬出を認めた。この数値を超えた場所でも樹皮が1キロ当たり6400ベクレルを下回った場合に限り伐採・搬出を可能とした。

■東京五輪視野に工場 避難区域に国内最大規模

 県は原発事故に伴う避難区域に、国内最大規模となる建築用CLTの生産工場を整備する方向で調整を進めている。被災地の産業振興と県内全域の林業再生を目指した取り組みで、平成32年の東京五輪・パラリンピックの関連施設向けに出荷することも視野に入れている。
 工場は東日本で初めてのCLT生産工場になり、国内最大級の年間5万立方メートルの出荷を目指す。県は大熊町が復興拠点に位置付ける同町大川原地区など複数の場所を建設候補地として検討している。
 大川原地区は居住制限区域だが、30年度に開設予定の常磐自動車道大熊インターチェンジ(仮称)に近く、高速道路を利用し県内全域からCLTの原料となる木材を集めやすいメリットがある。
 ただ、県内の他の地域からも生産工場設置を求める声が上がっているという。
 
※CLT Cross Laminated Timber(クロス・ラミネーテッド・ティンバー)の略称。木の板の繊維が直角になるよう、縦と横に交互に木材を組み合わせて接着した合板。断熱性や遮音性が高く、軽いのが特徴。

 ■CLT注目の建材 需要拡大けん引役期待

 新たな建築材「CLT(直交集成板)」が県内の林業を再生するけん引役になると期待されている。
 木材を組み合わせて作るCLTは耐久性や断熱性、防音性に優れ、建築工事の工期を短縮できる利点がある。海外ではアパートやマンションの外壁などに使われている。県CLT推進協議会長を務める菅家洋一会津土建社長(67)=会津若松市=は約10年前、欧州視察の際にその存在を知った。「木材の需要拡大につながる」と考え、平成22年に国内で初めてCLTの板材をオーストリアから輸入。会津若松市のアドリア北出丸カフェの天井と床に使った。翌年には国産スギをオーストリアに送り、CLTの板材に加工して強度試験を実施した。
 26年には、経済産業省資源エネルギー庁の事業の一環で芝浦工大のモデルハウスを会津若松市に移設し、室内の温度や湿度など各種データ収集している。
 CLT普及に向けて設立した協議会には会津土建のほか、菅野建設(福島市)、藤田建設工業(棚倉町)、協和木材(塙町)の三社が加盟している。県森林加速化・林業再生基金事業などを活用し27年、湯川村にCLTの共同住宅を東日本で初めて建設した。放射性物質検査を経た県産スギのCLT板材を使い、鉄筋コンクリート造りに比べて4割程度短い工期で仕上げた。
 菅家社長は「CLTを製造する過程で発生するチップを燃料にしたバイオマス工場、発電所の整備も必要になる」と話している。

 ■県木連会長 朝田宗弘氏に聞く 皆伐・再造林が理想

 森林除染の範囲をめぐる議論が関係省庁で本格化する。原発事故からの林業再生に向け、関係者は何を求めているのか。県木材協同組合連合会の朝田宗弘会長(73)に考えを聞いた。
 
 -復興庁と環境省、農林水産省が除染を含めた森林再生の在り方を再検討している。
 
 「森林に飛散した放射性物質は原発事故に由来するものだ。全て除染してもらいたいのが本音だが、費用も巨額で物理的にも難しい。これまでの環境省による森林除染は原則として、民家や農地から約20メートルの範囲と日常的に人の出入りがある生活圏に限られていたが、範囲を拡大しようとする動きは歓迎する」
 
 -森林環境の再生に向けて具体的にどのように取り組むべきか。
 
 「木材業界の素材生産業者からすれば、スギなどの対象樹木を全て伐採する『皆伐』、切り倒した場所に新たに植える『再造林』が理想だ。間伐と表土流出防止対策を主体とした県のふくしま森林再生事業は有意義だが、全て切り倒して新たに植えた方が、間伐より作業効率が良い。結果として放射線量の低減、風評の払拭(ふっしょく)につながると期待される」
 
 -県内で皆伐・再造林が進まない要因は何か。
 
 「率直に言って経費だ。間伐の場合は一ヘクタール当たり20~30万円だが、皆伐・再造林は100~200万円掛かる。ただ、予算がないからできないでは困る。原発事故を起こした東電と国が責任を果たすべきだ。まずは県予算で皆伐・再造林のモデル事業に着手し、効果を国に示す方法が現実的かもしれない。いずれにしても、全国では新たに植林する動きが鈍い傾向にある。今から植え替えを進めれば30年後、40年後に他県よりも資源量が増える」
 
 -新たな建築材CLTが注目を集めている。
 
 「少子高齢化の影響で県内の住宅着工戸数は確実に減少していく。建築用材だけでは林業は先細る。将来を見据え、CLTやバイオマス発電向けの燃料用チップ用材など新たな素材を開拓しなければならない。平成32年の東京五輪・パラリンピックで県産材のCLTなどを活用してもらえるよう準備を進めたい」
 
 あさだ・むねひろ 浪江町出身。双葉高、千葉商大卒。朝田木材産業社長で、平成20年6月から県木材協同組合連合会長。原発事故で福島市に避難しており、週の半分は浪江町にある製材工場に通う。関連会社の冠婚葬祭業「如水」の町内での事業再開も目指している。

 ■田村に木質バイオマス発電 31年売電開始目指す 若松や白河などで稼働

 田村市が市内大越町に整備している市産業団地に、間伐材などを利用する木質バイオマス発電施設が建設される。発電量は一般家庭約1万5千世帯の年間消費電力量に相当する約6800キロワットを見込み、平成31年ごろの売電開始を目指している。
 青森県平川市や岩手県花巻市で発電事業を展開しているタケエイ(本社・東京都)の100%子会社「田村バイオマスエナジー」が整備する。間伐材や一般木材などを加工したチップ材を燃料に発電する施設で、チップ材は主に県中地方の事業所から調達する。
 固定価格買い取り制度を利用して東北電力などに売電するほか、エネルギーの地産地消を目指した新電力会社の設立も検討している。
 施設には、燃料となる木材を燃焼した際に出る煙から放射性物質を取り除く集じん装置(バグフィルター)を導入する。焼却灰は県内の道路用資材として活用するという。
 発電した電力、焼却熱を活用した植物工場も併設する。発電施設と植物工場を整備する総事業費は約35億円を見込み、30人程度を雇用する。

 県によると、県内では現在、会津若松市のグリーン発電会津・木質バイオマス発電所と白河市の白河ウッドパワー大信発電所の2施設が県産木材を100%使い発電している。南相馬市の原町火力発電所、いわき市の常磐共同火力勿来発電所でも燃料の一部に活用している。

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