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【震災から5年】「漁業」 試験操業拡大進む 原発半径10~20キロ 海域追加も視野

 東京電力福島第一原発事故発生後、本県沖で続く漁業の試験操業は対象魚種と水揚げ量が年々、増加している。第一原発周辺で海水の放射性物質濃度が低下傾向にあるとして、県漁連は4月にも同原発から半径10キロ~20キロを対象海域に加えたい考えだ。県のモニタリング検査で、食品衛生法の基準値を上回る魚介類の割合は年を追うごとに低下している。本格操業の再開に向け、研究機関の整備も進む。
 
 福島第一原発では海側遮水壁が完成し、周辺海域の海水の放射性物質濃度が低下傾向にある。港湾内への汚染水の流出量も減少している。このため県漁連は、同原発から半径20キロ以内としている現在の操業自粛区域を半径10キロ以内に縮小する方向だ。
 ただ、相馬双葉漁協は19日に開いた試験操業検討委員会で、県漁連の方針を継続審議とした。北部の組合員から慎重意見が出たためだ。浪江町請戸地区の組合員がコウナゴについて独自にモニタリング検査し、結果を基に3月の次回会合であらためて協議する。
 試験操業は相馬双葉漁協が平成24年6月に開始した。当初の海域は宮城県との県境付近から相馬市近辺までの約50キロ以上沖合で、水深150メートルより深い海域で捕獲していた。
 同年10月には南側に16キロほど拡大。25年2月にはさらに南側へ最大30キロほど広げた。
 25年10月には、いわき市漁協と小名浜機船底曳網漁協がいわき市沖での試験操業を開始。同年12月になると、いわき側と相双側に分かれていた操業海域を統合し、所属漁協に関係なく海域内であればどこででも試験操業ができるようになった。27年7月には原発から半径20キロ圏を除く福島県沖全体が対象となった。
 現在、釣師浜(新地)松川浦(相馬)真野川(南相馬)久之浜、四倉、豊間、小浜、勿来(いわき)の8つの漁港と小名浜港、江名港(いわき)から試験操業の漁船が出航し、相馬原釜(相馬)、小名浜の二つの魚市場に取れた魚介類が集められている。
 
 ■対象魚種72種類に 震災前主力魚種 ヒラメは対象外
 
 試験操業は県などのモニタリング検査の結果、放射性物質濃度が安定して低く、ほとんどが不検出となっている魚介類を漁獲の対象としている。1月末時点で72種類まで増えた。
 平成24年6月にミズダコ、ヤナギダコ、シライトマキバイの3種類で始まった。その後、安全が確認された魚種を順次追加し、漁法、漁場を拡大した。ただ、28魚種が検査の結果、食品衛生法の基準値である1キロ当たり100ベクレルを超え、国の出荷制限を受けているため対象に含まれていない。水揚げが見送られている魚種は【表】の通りで、震災前に福島県の主力品種だったヒラメ、高級魚のホシガレイ、マツカワなどが含まれている。一方、試験操業の水揚げ量は初年度の24年度が121トンだったが、25年は466トン、26年は742トン、27年は1508トンと年々増加している。
 
 ■河川・湖沼出荷制限減少傾向に
 
 内水面漁業では現在、県内12の河川でアユやイワナなどの出荷制限が続いている。
 海の魚介類と同様に、県は毎週、検体を郡山市の県農業総合センターに運んで放射性物質濃度を測定している。1キロ当たり100ベクレルを超えると国から出荷制限の指示を受ける。対象の河川などでは釣りができないため、各漁協の運営にも影響が出ている。
 県によると、原発事故で放出されたセシウム134が半減期を過ぎ、魚の世代交代が進んでいるため、出荷制限の件数は減少傾向にある。
 県内には淡水魚の養殖場が42カ所あるが、いずれも出荷制限は受けていない。
 
 ■試験操業ルポ 松川浦漁港 本格操業再開願い マダラ、アンコウ...次々に水揚げ
 
 正午すぎ。相馬市の松川浦漁港にマダラ、アンコウ、カレイなどを積んだ漁船が次々と戻ってくる。港が活気づく時間だ。関係者が魚種や型ごとに、水揚げされた魚介類を手際よく仕分けしていく。
 相馬双葉漁協は毎週1、2回程度、試験操業を実施している。毎回20数隻の底引き船などが参加し、暗いうちに松川浦や釣師浜(新地町)などの漁港から出港する。
 試験操業できる魚種は拡大しているが、ヒラメ、マアナゴ、アイナメ、シロメバルなどはまだ対象になっていない。国の出荷制限が続いているためだ。相馬沖の主力魚種だけに漁業関係者にとって頭の痛い問題だ。
 相馬双葉漁協試験操業検討委員会の立谷寛治委員長(64)は漁港で水揚げ量や魚の型などを確認し、漁業者と言葉を交わす。若手の漁師もいるが、やはり高齢者が多い。仲買人の減少や風評による価格低迷なども重なり、本県漁業を取り巻く環境は厳しい。「水揚げ量を増やし、本格操業の再開につなげたい。ただ、震災前の単価に戻らないと港に勢いが出てこない」と話している。(相馬支局長・須釜 豊和)

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