東日本大震災

「震災から5年」アーカイブ

  • Check

【震災から5年】「漁業」 基準値超 減少続く 魚介類 昨年わずか0.046%

 福島県沖の魚介類を対象にした県のモニタリング検査で、平成27年に調べた約180種類、8577点のうち食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えたのはわずか4点(0・046%)だった。
 基準値を超過した4点は、富岡沖で採取したシロメバル3点と、いわき沖で捕獲したイシガレイ1点。
 23年4月に始まった検査などの推移は【表、グラフ】の通り。基準値を超えたのは23年が1972点のうち785点(39・8%)、24年が5580点のうち921点(16・5%)、25年が7641点のうち280点(3・7%)、26年は8722点のうち75点(0・9%)と減少を続けている。
 県は基準値を超える検体が減っている要因として(1)セシウム134が半減期の約2年を過ぎた(2)魚介類が世代交代した(3)福島第一原発の廃炉の進展により放射性物質排出量が減った-などを挙げている。
 県は県水産試験場(いわき市)の調査船などを活用し、福島第一原発から20キロ圏内を含む福島県沖で毎月、調査を行っている。原発事故前、本県で水揚げされていた魚介類約180種類を対象に、今年1月まで合わせて3万2947点を採取して調べた。
 県水産試験場で魚の大きさ、性別、食べていた餌などを調べた後、細かく刻んで県農業総合センター(郡山市)に運び、ゲルマニウム測定器で放射性セシウムを測定している。
 
 ■出荷基準を厳格化 県漁連
 
 一方、県漁連は試験操業で、魚介類を出荷する際の放射性セシウムの自主基準を1キロ当たり50ベクレル以下としている。食品衛生法の基準(1キロ当たり100ベクレル)よりも厳しく、50ベクレルを超えた場合、各漁協は出荷を自粛するとともに、県漁連は県に対しモニタリング検査の強化を要請する。
 検査は毎週150検体程度行われ、水曜日ごとに県のホームページなどで公表している。

 ■漁港に活気復興拠点

 試験操業の魚種が拡大する中、漁港には水産業の復興拠点となる施設が相次いで誕生している。
 
 いわき市小名浜 新市場が供用を開始
 
 新たに建設された小名浜魚市場が昨年3月、供用を開始した。いわき市沖の試験操業で取った魚が集まり、放射性物質検査で安全を確認している。場内の見学デッキには多くの水産団体関係者らが訪れている。
 魚市場内では昨年6月、船内で凍らせたカツオなどを扱う凍結品荷さばき施設も稼働した。近くにある県漁連の新冷凍冷蔵施設に納められ、水産加工品の原料となっている。
 一方、旧魚市場は昨年末、解体工事が完了した。昭和41年に建てられたが、震災で津波被害を受けた。跡地利用が課題だ。 
 
 相馬市 共同集配施設が完成
 
 相馬市尾浜の相馬双葉漁協相馬原釜魚市場敷地内に昨年12月、共同集配施設が完成した。主に仲買人が水揚げされた魚介類の仕分けや梱包(こんぽう)などの作業に使う。
 以前の施設は震災の津波で損壊した。市が国の復興交付金を活用し、事業費約5億6千万円を掛けて建設した。施設南側に水揚げした魚介類を競りにかける荷さばき施設を整備中で、平成28年度の早い時期の完成を目指している。
 磯部地区では市がコウナゴ、シラス、ゆでたツブ貝などの水産加工流通施設を建設した。相馬双葉漁協、事業者でつくる組合が共同利用する。水産加工品の直売所を併設した。
 
 県水産種苗研究所 相馬に移設整備
 
 相馬市の相馬中核工業団地内で、県水産種苗研究所の整備が進められている。平成29年度中に一部で供用を開始し、30年4月に本格的に業務を始める。
 研究所は相馬共同火力発電新地発電所近くにある化学品メーカー・ADEKA(本社・東京)の用地を借りて建設する。火発の温排水を利用し、ヒラメ、アワビ、アユの種苗を育成。本県沖などに放流し、県産ブランド再生の足掛かりにする。総事業費は約63億円。
 当初、28年度当初の業務開始を目指していたが、施設に海水を引き込む取水場所の選定に時間を要したことなどから工期がずれ込んだ。
 大熊町にあった旧研究所は震災の津波により全壊した。
 
 ■水産資源管理・利用方針 県、年度内に策定
 
 原発事故による沿岸漁業の操業自粛で水産資源が増え、大型化している実態を踏まえ、県は今年度内に新たな水産資源管理・利用方針を策定する。
 県の方針案は、操業回数や時間などを示す漁獲努力量の抑制、流通と連携した漁業モデルの構築、漁獲サイズの設定-の三本柱で構成する。操業自粛で水産資源が増えているため、操業回数や時間を大幅に減らしても原発事故前の漁獲量と金額を達成できると試算している。
 さらに、水産資源の大型化に伴い、漁獲対象を従来より大きく設定すれば収入増が見込めるほか、選別作業などの手間を削減できるとみている。
 漁獲努力量の抑制で、週休2日制や輪番制など効率的な働き方を実践でき、漁業を離れている漁師の現場復帰や新たな担い手の確保にもつながるとみられる。
 県は今後、有識者から助言を受け魚種・漁法ごとの方針案を漁業者に示す。原発事故前の漁獲量を実現できる漁獲努力量も提言する方針だ。
 ただ、試験操業では複数の仲卸業者による競りではなく、個別に販売価格を交渉する相対取引が行われている。競りに移行した場合、風評による価格の下落も懸念され、資源管理と市場需要の調整が課題になる。
 
 ■水産資源量2倍以上に
 
 原発事故後、本県沖で水産資源量が増加している。
 操業1時間当たりの漁獲量を示す値「CPUE」で分析すると、底引き網漁の震災前と平成25年の比較では相馬原釜地区で約2・5倍に、いわき地区で2・4倍に増えた。

カテゴリー:震災から5年

「震災から5年」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧