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【震災から5年】「国際研究都市構想」 問われる具現化 東京五輪で世界にアピール

 福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想全体の具現化に向けた中長期的な工程表は【図】の通り。政府は東京五輪・パラリンピックで復興した福島の姿をアピールすることを目指し、開催年の平成32(2020)年を当面の目標とした。
 
 ■構想先駆け工場4月稼働 小高の菊池製作所筋力補助装置を製造
 
 東京電力福島第一原発事故で避難区域になっている南相馬市小高区で、イノベーション・コースト構想の先駆けとして期待される工場が4月から稼働する。飯舘村に主力工場を置く総合製造業「菊池製作所」(本社・東京)の南相馬工場だ。装着型の筋力補助装置「マッスルスーツ」の製造を担う。
 マッスルスーツはイノフィス(東京)が開発。人工筋肉の収縮を利用し、重い物を持ち上げる時などの負担を軽減できる。これまで、介護事業所などにサンプル出荷しており、将来的に法人・個人向けに販売する予定だ。南相馬工場では地元から3人を新規採用しており、雇用促進にも一役買っている。
 菊池製作所は小型無人機(ドローン)の製造も手掛ける。自律制御システム研究所が開発したもので、大きさは直径90センチ、高さ50センチ。6つのプロペラを使って安定した飛行が可能で、最大速度は時速約36キロ。自動で飛行する制御装置を備える。
 最大6キロまで積載が可能で、放射線測定機器やカメラなど用途に合った装置を取り付けることで、原発事故の廃炉作業、除染、各種観測などさまざまな場面で活用できる。同研究所、菊池製作所を含む協力企業でつくるミニサーベイヤーコンソーシアムを通じて販売する。
 
 ■県内ロボット製造業目標 出荷額5年で2.5倍 県、研究支援し企業誘致
 
 ロボット産業の集積に向け、県は平成32年度までの第3次復興計画にロボット製造業の製造品出荷額を今後5年間で2・5倍に増やす数値目標を盛り込んだ。目標では、25年に39億6千万円だったロボット製造品の出荷額を32年には100億円以上に引き上げる。
 企業や大学の技術開発・実証研究への支援、県内企業の業界参入の促進、ロボット関連企業の誘致などに取り組む。
 ロボット関連の世界大会の誘致にも乗り出す。内堀雅雄知事は昨年の9月定例県議会で、政府が32(2020)年の東京五輪パラリンピックに合わせて開催する産業用ロボットの世界大会「ロボットオリンピック」(仮称)の誘致を表明した。世界が注目する東京五輪を情報発信の好機と捉え、県内開催を実現させたい考えだ。内堀知事は「世界に誇れるメードイン福島の技術や製品、人材を国内外に力強く発信できるよう全力で取り組む」と意気込む。
 
   ◇   ◇
 
 ロボット産業の集積には県民の関心を高める取り組みも欠かせない。県はロボット関連のイベントやコンテストを開催している。昨年11月には郡山市のビッグパレットふくしまで災害現場や廃炉、介護・福祉などさまざまな分野で活躍するロボットを紹介する「ロボットフェスタふくしま2015」を初めて開いた。県内外の18の企業や研究機関、大学が産業用ロボットを展示した。約4800人が訪れ、会場は熱気に包まれた。
 
 ■各分野で県内企業活躍
 
 県内ではロボット産業の先駆けとなる企業が既にさまざまな分野で活躍している。
 サイバーダイン(本社・茨城県つくば市)は県の補助事業を活用し、介護支援用のロボットを開発した。モデル事業として郡山市内の特別養護老人ホームに貸し出すなどしている。
 同社や菊池製作所が所属している、ロボット関連産業などの企業や団体で構成する県廃炉・除染ロボット技術研究会は平成25年6月の設立後、年々会員数が増えている。会員数は1月現在で138となっている。
 
 ■政府と県協定締結 構想の拠点整備
 
 政府と県は1月、イノベーション・コースト構想に基づく拠点施設のロボットテストフィールドと国際産学官共同利用施設(ロボット)の整備に向け、運営の在り方や推進体制、財政支援などに関する協定を締結した。
 協定の全文は以下の通り。両拠点の整備は全額国費負担で県が行うことや運営を新たに設ける運営法人が担うことなどを明記した。
 
 ■【イノベーション・コースト構想の国と県の協定】
 
 ロボットテストフィールドと国際産学官共同利用施設(ロボット)(以下「両拠点」とする)が構想の推進の核として求められる役割を十分に果たし、浜通り地域へのロボット関連産業の集積や雇用の創出を実現するため、両拠点の整備・運営などに関して経済産業省と福島県(以下「県」とする)は以下の方向で調整を行うことについて確認する。
 
◆1 両拠点の機能
 両拠点は概ね以下の機能・設備を持つ施設とし、着工に向けた具体的な内容については経済産業省と県が共同して設立した検討委員会(以下「検討委員会」とする)で平成27年度内に施設全体の詳細計画を取りまとめるものとする。なお、災害対応訓練や認証など段階的な機能強化・拡充を視野に入れていく。
▽ロボットテストフィールド
(1)ロボットの実証試験
(2)ロボットの試験評価と評価結果を認証に活用できる仕組みの構築
(3)ロボットの操作教習、検定
▽国際産学官共同利用施設(ロボット)
(1)国内外研究機関における先端研究
(2)地元企業とのコーディネート、技術移転
 
◆2 両拠点の整備
 両拠点の施設・設備・機器の整備は国の財政的支援で県が行う。
 
◆3 両拠点の運営
 両拠点は県が新たに設置する運営法人が運営するとし、基本財産に対する拠出については、経済産業省と県が責任を持って対応する。両拠点の運営に当たっての中長期的な取組方針を策定するため、運営法人に、経済産業省、県、入居研究機関などからなる運営戦略会議(仮称)を設置する。
 
◆4 推進体制の構築
 国は2、3における県の取り組みと緊密に連携し、各拠点の集積のメリットを活かして浜通り地域の自律的な復興を支援する観点から、広域的な視点に配慮しながら、各拠点整備状況の進捗管理や各拠点間の連携の方策などを検討するため、イノベーション・コースト構想拠点の運営・推進に係る協議会(以下「協議会」とする)を構築する。構想の実現過程において生じる様々な課題を継続的に抽出・把握するとともに、解決を図る実行組織として、各拠点などに対し中長期的に関与する。経済産業省は今後、関連する政府決定などで協議会について明確な位置付けをし、同協議会の下、国、県、産学が一丸となって構想を推進する。
 
◆5 財政的支援
 経済産業省は両拠点の施設・設備・機器の整備費、運営法人の安定的な自立経営が可能となるまでの当分の間の運営費や、大学、研究機関、企業などが行う両拠点を活用した研究開発・実証活動の費用について、県の意向を十分に踏まえ必要な額の確保に努める。
 
◆6 人的支援
 経済産業省と県は運営法人の設立段階で運営法人の運営面における役員と職員の派遣・確保について最大限検討する。
 両拠点がロボット関連技術について世界の最先端の研究開発・実証の拠点となるよう、経済産業省は関係省庁、国立研究開発法人、地方自治体、公益法人、民間企業、研究開発機関などに人員の派遣を働き掛け、運営法人において必要となる高度人材の確保に取り組む。
 
◆7 両拠点の利用の促進
 両拠点の利用が安定的に確保されるよう、経済産業省はロボットテストフィールドを利用してロボット認証制度やオペレータ検定制度に必要な試験方法の研究開発を行う。また、経済産業省と県は関係省庁や自治体と情報共有を図りながら、官公庁や県をはじめとした自治体レベルへのロボット配備促進に取り組む。
 経済産業省は両拠点でのロボット研究開発・実証の促進を通じて両拠点の継続的利用を確保するため、関係省庁、国立研究開発法人、大学、研究機関、企業などが行う両拠点を活用した研究開発活動の実施に向け、継続的に関係省庁との協議を進める。
 経済産業省は各種プロジェクトの実施などを通じ、産学官の関係者の国際産学官共同利用施設(ロボット)への入居や同施設を活用した技術開発の促進に取り組む。
 経済産業省は両拠点に世界最高水準の英知の集結が図られるよう、産学と連携しながら国内外の大学、研究機関、企業などに対し両拠点の利用に向けた働き掛けを継続的に行う。
 経済産業省は2020年に開催が予定されているロボット国際競技大会でロボットテストフィールドにおける競技の実施について検討する。
 
◆8 両拠点の立地場所
 県は平成28年度内の一部運用開始ができるよう経済産業省との十分な協議の上、早期に両拠点の立地場所を確定するものとする。
 
◆9 地元企業への支援
 県は浜通り地域におけるロボット関連産業の集積を図るため、国際産学官共同利用施設(ロボット)に県ハイテクプラザ浜通り分所の入居を検討し、必要な機器整備などに要する費用については県の意向を十分に踏まえ、経済産業省が予算の確保に努める。
 経済産業省は県ハイテクプラザが行う地元企業への技術支援・技術指導などに関しての国立研究開発法人などの支援・連携の仕組みの構築を進める。
 
◆10 その他
 上記の内容に関しては必要に応じ協議の上、見直しを行う。
 
平成28年1月21日
経済産業副大臣 高木 陽介
副知事     鈴木 正晃

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