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【震災から5年】「国際研究都市構想」 「イノベーション・コースト構想」始動

 浜通りをロボットや廃炉などの世界最先端地域とする福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想が本格的に動きだす。昨年9月に楢葉町の楢葉遠隔技術開発センターの一部が運用開始し、平成28年度政府予算案には構想関連事業費として約145億円が計上された。26年6月の構想策定から約1年9カ月。東京電力福島第一原発事故からの産業復興をどう具体化させるかが問われている。
 
 イノベーション・コースト構想の拠点施設では、昨年10月に一部(研究管理棟)で運用が始まった楢葉町の楢葉遠隔技術開発センターなど既に事業化が進んでいる施設がある一方、今後の事業化に向けて検討を続けているプロジェクトもある。
 政府の平成28年度予算案で整備費約51億円が計上されたロボットテストフィールドは立地場所が未定だ。
 
<既に事業化が進んでいる拠点>
 
・放射性物質分析・研究施設
 燃料デブリや放射性廃棄物などの処理・処分技術の開発などを実施。大熊町で平成29年度の運用開始を目指す。
 
・楢葉遠隔技術開発センター
 廃炉作業などに従事するロボットの実証施設。楢葉町で昨年10月に一部運用開始。
 
・廃炉国際共同研究センター国際共同研究棟
 国内外の大学、研究機関、企業が集結し、廃炉研究を強化。平成28年度中に富岡町に整備予定。
 
<今後事業化を進めていくプロジェクト>
 
・ロボットテストフィールド
 小型無人機(ドローン)や災害対応ロボットの実証試験が行えるテストフィールドを整備。平成28年度予算案で、整備に必要な費用として51億円の予算を盛り込んだ。
 
・国際産学官共同利用施設(ロボット)
 ロボット技術の共同研究施設を設。平成28年度予算案で整備に必要な費用として、21億7千万円の予算を盛り込んだ。
 
・スマート・エコパーク
 リサイクル産業の集積を図るプロジェクトを実施。県で研究会を開催中。
 
・国際産学連携拠点
 国内外の機関が結集し、廃炉、環境修復、農林水産の教育・研究を実施。具体化に向けてさらに検討。
 
・エネルギー関連産業
 エネルギー産業の集積に向けた各種プロジェクトを実施。具体化に向けて県が検討。
 
・農林水産プロジェクト
 各種プロジェクトを実施。具体化に向けて県が検討。
 
■構想推進へ産学官連携
 
 イノベーション・コースト構想では、政府と県、各拠点が協力し、研究開発や人材育成など産業の復興を推進できるような連携体制の構築を目指している。
 県内ロボット産業の活性化の柱となる認証制度の創設は国、浜通り地域の総合調整などは県が担う。
 
■浜通りに実証試験場 28、29年度県整備企業誘致で雇用確保 ドローン
 
 県は小型無人機(ドローン)の実証試験などを行うロボットテストフィールドを国の全額補助で平成28年度から29年度にかけて浜通りに整備する。ドローンの機体の認証や操縦者の検定の機能を持たせる。試験だけでなく認証や検定も実施することで周辺地域への関連産業の企業誘致を図り、雇用確保につなげたい考えだ。早ければ平成28年度中に一部で供用を開始する。
 
■復興庁統括官 熊谷敬氏に聞く 熱い思いの継承鍵
 
 浜通りにロボットなど新産業を集積するイノベーション・コースト構想の発案段階から携わってきた復興庁の熊谷敬統括官に構想の狙いや今後の課題を聞いた。
 
 -構想の策定にこぎ着けた。
 
 「複数省庁にまたがる事業を政府がどのように具体化していくか、福島の研究会の成果をいかに国家プロジェクトにまでつなげていくかが課題だった。研究会の座長を務めた赤羽一嘉経済産業副大臣(当時)のリーダーシップと突破力があって実現した。研究会の発足当初から地元の内堀雅雄副知事(当時)が情熱を持ち、毎回、出席してくれたのも非常に力になった」
 
 -構想の狙いは。
 
 「東京電力福島第一原発の廃炉を進めていくためには周辺地域でロボット技術をはじめとする分野の研究開発が求められる。研究開発した技術や製造品は廃炉以外でも活用できる潜在能力を持つ。育成した研究者や技術者は新産業のけん引役として期待される。そうした環境を生かし、原発事故で産業基盤を喪失した浜通りの産業復興を図る」
 
 -拠点施設に位置付けられているロボットテストフィールドなどの整備の見通しがついた。
 
 「若い人に夢を与えられるよう、イノベーションが起こるフィールドを作ろうという思いからイノベーション・コーストという名称となった。『絵に描いた餅にしない』を合言葉に策定した。具現化はまだ緒に就いたばかりだが、拠点が予算化されるなど一定の形が現れ始めている」
 
 -さらなる構想の推進には地元企業はどう関わっていくべきか。
 
 「従来から浜通りはものづくり企業が多く、高いポテンシャルを持っている地域という優位性がある。構想の分野はロボットや廃炉だけでなく、農林水産業など多岐にわたる。それぞれが構想に関心を持ち、積極的に関与していくことで参入の機会は広がるだろう」
 
 -具現化に向けた課題は。
 
 「廃炉は30年から40年を要する。構想の具現化に向けた長い取り組みを維持できるかが課題となる。構想は廃炉へのチャレンジが柱となっている。研究会メンバーだった国や県、産業界、学会、民間などの方々が構想策定に懸けた熱い思いを人が代わっても産学官で共有できるようにする必要がある。浜通りの真の復興と廃炉の達成まで『イノベの魂』をいかに引き継いでいけるかが鍵だ」
 
 くまがい・たかし 富山県高岡市出身。東京大経済学部卒。昭和58年通商産業省(現経済産業省)入省。特許庁総務部長、政府の原子力災害現地対策本部副本部長を歴任。平成26年7月から復興庁統括官。57歳。
 
 

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