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【震災から5年】「文化」 民俗芸能 守り伝える 団体の活動 徐々に復活 県が支援事業も

飯舘中1年生に田植え踊りを指導する荒さん(中央)

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故により、住民の心のよりどころとなっていた浜通りの民俗芸能は被害を受けた。「地域の宝を守り抜け」-。津波で流失した道具を新調し、途絶えそうになった踊りや神楽を再興する動きが各地で出ている。避難区域に取り残されていた文化財の運び出し作業も進む。一方、災禍の記憶を後世に伝えようと、「震災遺産」の収集・保存活動も本格化している。
 
 県が平成25年12月から26年3月にかけて実施した調査によると、震災と原発事故の影響により相双地方の民俗芸能保存団体の約半数に当たる64団体が活動休止に追い込まれた。中通りの9団体、会津地方の2団体、いわき市内の2団体に比べ突出している。
 
 一時、活動を取りやめていたが関係者の熱意で復活したケースもある。
 
 県は今年度、民俗芸能の再興に向けた支援事業を展開している。NPO法人「民俗芸能を継承するふくしまの会」に委託して、県内10地区で復活した民俗芸能の事例などを紹介する説明会を開いた。その後、民俗学の専門家らを各保存団体に派遣し、実情に応じて継承策を助言している。
 
 ■飯樋町田植え踊り 飯舘中生に継承 保存会顧問 荒利喜さん 「復興に欠かせない」
 
 「指導してくれてありがとう」。飯舘村の飯樋町田植え踊り保存会で顧問を務めている荒利喜(としのぶ)さん(66)=川俣町に避難=は、中学生からの寄せ書きを見詰め笑顔を見せた。原発事故で全村避難が続く村の民俗芸能を伝えようと、飯舘中生に指導している。
 
 田植え踊りは村中央部の飯樋町に270年前から伝わり、保存会が平成12年から継承している。かつては中学生から高齢者までが練習に打ち込み、住民同士が絆を強める機会ともなった。しかし、原発事故により活動は休止に追い込まれた。
 
 転機を迎えたのは25年春。荒さんは福島市飯野町に移転した飯舘中から、田植え踊りを教えてほしいと依頼された。生徒が総合的な学習の時間に、地元の伝統芸能を体験する授業だった。
 
 「村の良さを知ってもらいたい」。荒さんは保存会の会員数人と講師を引き受けた。夏から秋までの約5カ月間にわたり毎週1~2時間、1年生に歌や踊りの稽古をつけている。今年で3年目を迎えた。
 
 生徒が学ぶのは9場面ある田植え踊りのうち、正月や収穫などの4場面。独特の節回しや動作に苦戦するが、荒さんの助言を受けて上達した。今年の1年生は昨年12月、荒さんに寄せ書きをプレゼントした。
 
 村内は帰還困難区域を除き、来年3月までに避難指示が解除される見込みだ。荒さんは「田植え踊りは世代を超えた交流が広がる。復興に欠かせない」と強調している。
 
 ■県文化財保護審議会委員 懸田弘訓氏に聞く 物心両面の援助を
 
 震災と原発事故により、浜通りでは多くの民俗芸能団体が活動を休止している。いかに再興を進めるのか。県文化財保護審議会の懸田弘訓委員(78)に聞いた。
 
 -浜通りには特色ある民俗芸能が多い。
 
 「典型的なものが田植踊だろう。昔は小正月にやっていた。県内120カ所にあるが、このうち70カ所は浜通りだ。最も洗練されたものは海岸沿いにあった。しかし、震災と原発事故の影響で南相馬市小高区の村上地区、浪江町請戸地区に残るのみとなった。県にとって損失と言える。じゃんがら念仏踊りは北は大熊町、双葉町、西は小野町や平田村、南は茨城県北茨城市まで110団体以上あったが、今では6~7割になったと推測している」
 
 -関係者が地元から避難したために途絶えそうになっているケースが多いと聞く。
 
 「民俗芸能の価値が著しく損なわれ、消滅する危機にある。復活した団体に共通しているのは、リーダーや指導者に熱意があるという点だ。信仰心が厚く、とむらいの気持ちを持っている」
 
 -道具や衣装の保存場所がないことも、民俗芸能の復活をさまたげる要因になっている。
 
 「一つ一つの道具が大きく、仮設住宅には置くことができない。手本になるのは浪江町だ。町の熱意によって二本松市の仮役場近くに場所を確保した。冷暖房を入れた練習場所も設け、伝統の灯を守っている」
 
 -今後の課題は。
 
 「震災後、民俗芸能は復活する動きが出たが、今は少なくなってきている。避難している関係者と芸能をどのように結び付けていくかが今後の課題となる。一回だけ演じて、再び休んでしまっているケースもある。精神、物資両面の援助が相まってこそ伝統をつないでいける。これまでよみがえった活動をぜひ継続していってほしい」
 
 かけた・ひろのり 伊達市霊山町生まれ。保原高、福島大学芸学部卒。県立博物館学芸課長、川口高校長などを歴任した。平成5年から会津大非常勤講師を務めている。民俗芸能学会福島調査団長。78歳。

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