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制度に揺れる(2) 転居、改築できず 仮設住宅の劣化に苦悩

 川俣町体育館脇の仮設住宅で暮らす無職菅野二郎(77)は室内の黒ずんだ壁を見詰め、「あっという間にかびてしまう」とため息をついた。
 東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示解除準備区域の同町山木屋地区から避難し、妻と2人で4畳半2部屋の仮設住宅に入った。木造2階建ての自宅と比べ、格段に窮屈になった。特に菅野を困らせているのは湿気によるかびだ。
 仮設住宅は断熱性が乏しい。冬は窓や壁に結露ができてしまう。夏には湿気がたまる。居住環境の悪化で、ストレスが蓄積する。菅野は目まいや頭痛に悩まされている。

 仮設住宅は災害救助法に基づき、原則2年間の使用を前提に整備された。既に震災と原発事故から5年が過ぎ、劣化が進む。県が昨年実施した一斉点検では県内の仮設住宅181団地のうち12団地で建物が傾く原因となる木製基礎くいの腐食やシロアリ被害が発生していた。
 このような状況に対し、県は「仮設住宅は、あくまで仮の住まい」(建築住宅課)として急場しのぎの改修工事で対応する。災害救助法を所管する内閣府も同様の認識だ。
 避難者が住環境改善のため自ら改築することはできる。しかし、その場合は原則として避難者の自己負担となる。さらに、県への改築届け出も必要だ。退去する場合は原状回復し、県に返還しなければならないなどハードルは高い。
 劣化が少ない仮設住宅への住み替えも原則認められない。内閣府の担当者は「災害救助法の概念では仮設住宅などから移る場所は『定住の地』となり、避難解消とみなされる」と説明する。

 山木屋地区の避難指示は早ければ6月に解除されるが、菅野はすぐに戻る考えはない。来年春に商業施設が地区中心部に完成予定で、生活に支障がないことを確認してから帰るつもりだ。しばらくは我慢の日々が続く。
 こうした現状について、自治体政策が専門の福島大行政政策学類教授の今井照は「原発災害と自然災害はそもそも時間軸が違う。自然災害の枠組みで対応しているから問題が発生している」と指摘し、新たな支援の枠組みを訴える。(敬称略)

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