東京電力福島第一原発事故で全村避難している飯舘村は、政府の避難指示解除方針を受け入れ、来年3月末に帰還困難区域を除く村内の避難指示を解除する。23日、村議会全員協議会に説明し、了承を得た。4月以降、政府と交渉して正式に決めるが、菅野典雄村長は「必ず実現させたい」と強調した。平成30年4月には村内で幼稚園と小中学校を再開させる方針も示した。
帰村時期を明確にすることで住民の帰還意欲を高め、復興を加速させる。政府は来年3月までに避難指示解除準備、居住制限両区域の避難指示を解除する方針を示している。村独自に解除時期を決めることで、政府が来年3月末以前に解除するのを避ける狙いもある。
環境省による農地などの直轄除染が来年3月に完了する見通しで、村の基幹産業である農業が再開できる時期に合わせた。生活再建のための財物賠償は避難区域に応じて算定方法が異なるが、原発事故発生後6年となる来年3月には全て全損とみなし一律化されるため、住民の不公平感を解消できると判断した。
住民が帰還の準備を進める「準備宿泊」を、役場機能が全面的に村の本庁舎に戻る7月1日から導入したい考えだ。ただ、延長するかどうかを3カ月ごとに政府の原子力災害現地対策本部と協議する必要がある。人手が少ない村にとって負担が大きいため、避難指示解除まで続く長期宿泊制度の創設を国に要望する。
村は4月にも原子力災害現地対策本部に村の意向に沿った帰還時期の設定と、長期宿泊の実施を要望する。併せて住民懇談会を開き、理解を求める。
村議会全員協議会終了後、菅野村長が記者会見し、「国と対等な関係で話し合い、避難解除の日が変わらないようにする」と述べた。
幼稚園と小中学校の再開時期については、来年4月に村内の飯舘中敷地内に集約して運営する方針だった。しかし、中学校の設備を児童と幼児向けに改修する必要があり、再開を1年先送りする。
■生活圏の回復焦点
来年3月末の避難指示解除に向け、村は食料品や日用品を購入する商業施設の充実や生活圏の回復が焦点とみている。
住宅周辺に点在する放射線量が局所的に高い地点の対策や、計画が具体化していない森林除染への対応、除染で表土が削られた農地の栄養回復なども住民帰還を進める上での試金石となる。
(カテゴリー:福島第一原発事故)