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(25)無農薬野菜 全国に

農業体験の大学生とともに、ビニールハウス内でレタスの種をまく菅野(右)

 「大きく育って」「収穫の日が楽しみだ」。山々に囲まれた二本松市東和地域の畑に、若者の声が響く。
 地元の農業法人「きぼうのたねカンパニー」が実施している農業体験ツアーだ。3月には2泊3日の日程で明星大(東京都)の学生5人が訪れ、ビニールハウス内にレタスの種をまいた。農家に泊まり住民と交流を深めた。
 ツアーは首都圏の学校や企業などを対象に企画し、年間十数組を受け入れている。東京電力福島第一原発事故による風評払拭(ふっしょく)に向け、福島の現状に触れ、農産物の安全を知ってもらうのが狙いだ。
 法人代表の菅野(すげの)瑞穂(28)は「農業を通じ古里の復興に貢献していきたい」と意欲を燃やす。

 きぼうのたねカンパニーは平成25年3月に誕生した。モットーは「たねをまくことは、命をつなぐこと」。東日本大震災と原発事故の影響が続く県内の農業に、希望の灯をともしたいとの願いもこもる。
 父母とともに、約3・5ヘクタールの農地でイチゴ、トマト、ピーマン、ナス、レタス、カブなど野菜40種類、米、もち米を無農薬で栽培している。野菜はみずみずしさが売りだ。稲は刈り取った後、天日干しにする。じっくりと乾燥させることで、甘みが増すという。絶対の自信を持って送り出す。
 道の駅「ふくしま東和」などで販売しているほか、インターネットで全国に売り出している。こだわりの農産物を求める顧客が全国各地に増えている。

 子どもの頃から土の香りが好きだった。日本女子体育大を卒業して地元に戻り、父母から農業を学んだ。原発事故直後、手塩にかけて育てた野菜から食品衛生法の基準値を超える放射性物質が検出された。自宅の山で採れるワラビやタケノコも出荷できなくなった。
 対策を講じて放射性物質濃度が基準値以下となっても、一部の消費者から「福島産」というだけで敬遠された。心を込めて育て、どこに出しても恥ずかしくないと思った野菜だった。「店頭で売れ残る姿を見るのがつらかった」と振り返る。
 友人、知人は「福島で農業を続けていくのは難しいのではないか」と声を掛けてきた。不安と葛藤の日々が続いた。(文中敬称略)

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