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「避難指示解除」 帰還へ環境回復急務

全ての業務を再開した葛尾村役場。職員が住民帰還に向けた準備を進めている

 ■政府「6月12日」提示... 家屋解体進まず 葛尾村■
 東京電力福島第一原発事故に伴う「避難指示解除準備」「居住制限」両区域の今春の解除を目指してきた南相馬、川俣、葛尾の3市町村。政府は葛尾村の解除時期を「6月12日」と提示したが、住民が望む家屋の解体・再建が進んでおらず、放射線に対する不安も根強い。南相馬、川俣両市町ではいまだに見通しが示されず、古里に帰還する条件が整うまでの難しさが浮き彫りになっている。

 原発事故で全村避難を強いられた葛尾村は1日、全ての業務を村役場に戻した。JA支店も5年ぶりに村内での業務を再開。6月上旬までには村商工会の無料宅配サービスが始まり、村民の交流施設が完成する。一部の食料品店も避難指示解除に合わせて村内で営業を再開する予定だ。
 一方、環境省による被災家屋の解体作業は進んでいない。住民は震災と避難生活で傷んだ住宅を建て替えるため早急に着手するよう求めているが、申請のあった346件のうち3月末までに完了したのは49件で全体の約14%にとどまる。
 2月には入札不調が起き、解体作業が中断している。関係者によると、「環境省の入札予定額では落札しても赤字になってしまう」と地元業者などが敬遠しているという。村は復興の足かせにならないよう、国に対して予定額の引き上げを求めている。
 田村市常葉町に避難している農業松本房男さん(87)は「自宅が解体され、新たな住まいが完成しないと早く村に戻りたくとも戻れない」と嘆いている。
 放射線に対する不安を抱える住民も多い。環境省は平成27年末までに、帰還困難区域を除く全域の宅地や農地など生活圏の除染を終えた。しかし、再び放射線量が上がる地点があるという。
 政府が6月12日の避難指示解除を提示したことを受け、10日に田村市船引町で住民説明会が開かれる。松本允秀村長は「異論はない」と前向きな姿勢を見せる中、住民の反応が注目される。
 
 ■葛尾村■ 
 避難指示解除準備区域
 397世帯1290人
 居住制限区域21世帯62人
 帰還困難区域33世帯118人
 (4月1日現在)
 
 ■農地、道路、森林除染の進捗鍵に 南相馬市■
 南相馬市は避難指示解除準備、居住制限両区域の4月の解除を目指していたが、その前提となる環境省による宅地除染が終了したのは3月末だった。桜井勝延市長は各世帯の線量を測定するなどした上で、5月のゴールデンウイーク明けに開く住民説明会で解除時期を明らかにする考えだ。
 ほぼ全域が避難区域になっている小高区では、日用品や食品などを売る仮設店舗「東町エンガワ商店」が開店した。市立小高病院は週5日診療しており、今月からは小高保健福祉センターと民間の二つの診療所が再開した。市の災害公営住宅が完成するなど、生活環境は少しずつ整いつつある。
 ただ、2月15日時点で農地除染の進捗(しんちょく)率は33%、道路は39%、森林は53%となっており、生活圏の環境回復を急ぐよう求める声は強い。小高区川房の主婦佐藤明子さん(60)は「住宅ばかりでなく、田畑や道路の線量が下がらないままでは自宅に戻れない」と訴える。市は放射線に不安のある世帯を対象にフォローアップ除染を実施するよう環境省に求めている。
 原発事故に伴い市内に設定された旧警戒区域、旧計画的避難区域が再編されてから16日で4年を迎える。
 

 
 ■南相馬市■
 避難指示解除準備区域
 3536世帯1万1186人
 居住制限区域126世帯477人
 帰還困難区域1世帯2人
 (平成27年9月5日現在)
 
 ■除染廃棄物の 早期撤去課題 川俣町・山木屋地区■

 川俣町の古川道郎町長は体調を崩して入院中で、公務に復帰予定の5月中旬以降、住民説明会を経て避難区域の解除時期を示すとみられる。
 帰還に向け、住民から仮置き場にある除染廃棄物を撤去するよう求める声が出ている。国直轄除染はほぼ完了したが、地区内の仮置き場38カ所に約50万トンの除染廃棄物が山積みになったままだ。環境省は平成26年11月、搬入から3年をめどとしていた仮置き場での保管期間の延長を町に要請した。町は搬出時期を早期に示すよう同省に求めている。
 昨年8月から行われている準備宿泊に登録している住民は7日現在で38世帯、百人。今月から自宅に泊まっている農業菅野源勝さん(68)は「田んぼに除染廃棄物の黒い袋が積み重なっていては帰還意欲が湧かない」と指摘する。
 一方、地域コミュニティー再生の拠点となる商業施設は来年3月に完成する予定。町や民間企業七社が出資した「かわまた復興発電合同会社」が運営する「復興メガソーラー発電所」の利益を全額、商業施設の運営費用に充てるが、安定した財源確保が課題となる。23年6月から閉鎖している山木屋診療所の再開に向け、町はかつて指定管理者だった済生会川俣病院と調整を進めている。
 

 
 ■川俣町・山木屋地区■
 避難指示解除準備区域
 311世帯1049人
 居住制限区域
 41世帯122人
 (平成27年9月5日現在) 
  
  
 ■県避難地域復興局長 成田良洋氏に聞く 医療、交通...連携し整備
  
 県の成田良洋避難地域復興局長(54)に、東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域の解除に向けた現状と課題を聞いた。
  
 -政府は平成29年3月までに居住制限区域と避難指示解除準備区域の解除を目指している。
  
 「葛尾村などで避難指示解除の動きが出てきたのは、帰還に向けた環境が整備されてきたためで喜ばしい。一方で、自宅に戻るのをためらう住民も多く、少しでも不安が解消されるようにできる限り取り組む。解除はゴールではなく、あくまでもスタートだ。避難している期間が長くなればなるほど、復興が難しくなる部分があり、時間との闘いでもある」
   
 -避難指示解除後も生活環境の整備が必要になる。
   
 「医療提供体制、交通インフラ、商業施設整備は共通の課題と言える。いずれも市町村の枠を超えて広域で連携しなければ解決できない。それは広域自治体の県が頑張らなければならない部分と考えている。ただ、生活環境が100%整ってから解除するものではない。復興状況を踏まえ、帰れる人から帰っていくというスタンスが必要になる」
  
 -避難指示解除後も、すぐには帰還しないと考えている住民は少なくない。
  
 「住宅確保や生活再建が難しいとみられる避難者に徹底して寄り添う。今後の住居に関する意向調査で未回答だった家庭などを対象に、早ければ5月の連休明けから個別訪問をする。不安や悩みを抱える世帯に情報を提供し、きめ細やかく相談に乗りたい。30~40人態勢でスタートさせる」
 
 なりた・よしひろ 伊達市出身。福島高、福島大経済学部卒。昭和59年に県職員となり、環境共生課長、知事公室長兼秘書課長、原子力損害対策担当理事などを歴任した。

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