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(29)6次化 理想を追求

大野農園の事務所に並ぶジュースやジャム。パッケージに工夫を凝らしている

 ジュース、ジャム、ビール...。石川町赤羽にある大野農園の事務所には、自家栽培の果物を原料にしたさまざまな加工品が並ぶ。社長の大野栄峰(よしたか)(32)はパッケージデザインに気を配り、世に送り出した6次化商品の一つ一つを優しく見詰める。
 農業の新たなスタイルを模索したい-。平成24年、両親の農園を継いで最初に作ったのはモモ、リンゴ、ナシのジュースだ。すっきりとした飲み口を目指し果物の粒が残らないように搾った。試行錯誤を重ね味に自信が持てるまで3カ月かかった。丈が短く幅の広い「小太り」形の瓶に、それぞれの果物の色を使ったラベルを張り、おしゃれに仕上げた。
 ジュースやジャムを製造している農家は多い。インテリアとしても使える個性的な瓶を採用したのは、他の商品と差別化を図るためだ。「果物の好きな若い女性から愛されるようアイデアを練った」と明かす。

 フルーツビールを造るのには苦労した。商品のターゲットは苦味やこくを嫌い、ビールを敬遠する傾向があるという女性だ。まろやかな口当たりを実現すれば、ヒット商品になると考え、福島市の福島路ビールとともに開発に取り組んだ。
 何度も県都まで足を運んだ。「もっと、もっと苦味を抑えよう」。調整を繰り返すたびに理想に近づいた。モモとリンゴの風味を加え、優しい味わいが完成した。
 330ミリリットル入り650円(税込み)。発売した25年の売り上げは1000本ほどだったが、今では年間約3000本を販売している。地元の旅館や観光施設に置いているほか、インターネットを通じて全国に売り込んでいる。狙い通り女性のファンが増えてきた。

 果物の可能性を広げる取り組みはさらに広がっている。26年には静岡県の紅茶メーカー「ティートリコ」と協力してフルーツティーを開発した。1袋50グラム入りで価格は950円(税込み)。年間約1万5000袋を売る人気商品に成長した。農園のモモとリンゴをドライフルーツに加工した。10グラムほどカップに入れてお湯を注ぐとお茶になる。甘い風味の「食べるお茶」をイメージした。
 ティートリコが11月、仙台市に開設する店舗に農園のジュースやジャムとともに並べる。新たな販路を探し、事業を広げる。(文中敬称略)

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