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(30)未来の花形産業に

大野農園のキッチンカー「オラゲーノ」。フルーツピザが人気だ

 石川町赤羽の大野農園は従来の枠にとどまらない農業の新たなスタイルを模索している。自家栽培の果物を使ったピザを調理、販売するキッチンカー「オラゲーノ」もその1つだ。
 約1000万円かけてトラックを改修した。調理器具を取り付け、目を引くデザインを施した。県内の祭りの会場や首都圏の商業施設で「リンゴとシナモンのピザ」「モモとマスカルポーネピザ」などを焼き、1枚500円のワンコイン価格で売る。熱々のチーズと新鮮な果物の組み合わせが絶品だと評判を呼んでいる。
 社長の大野栄峰(よしたか)(32)は東京電力福島第一原発事故の風評が続く中、消費者に直接、県産農産物の安全を発信したいと願う。「若い人が農業に興味を持つきっかけにもなるはず」と言葉に力を込める。

 大野農園は平成25年からリンゴの木のオーナー制度を始めた。1本当たり2万3000円(税込み)で所有者になり、葉摘みや収穫を体験してもらう。
 サッカーJ3の福島ユナイテッドFC(福島U)もオーナーに名を連ねる。地域貢献活動の一環で、選手自らもぎ取ったリンゴを全国の試合会場などで販売している。福島の果物のおいしさが全国に伝わる。
 スポーツチームという「異業種」と連携した取り組みが芽を出しつつあると大野は感じ始めた。「プロ同士が技術とアイデアを出し合えば、新たなビジネスや商品が生まれるはず」と期待している。

 20年前に2万人を超えていた石川町の人口は現在、約1万6000人にまで減少した。過疎と少子高齢化の波が襲う。
 町によると、農家の数はここ5年間で200戸ほど減り1257戸になった。命の糧を生産する取り組みをいかに守り、農地を次代につないでいくのか。大野は重い課題を抱える地域農業の担い手だ。町内でホウレンソウなどを生産している御光福園芸社長の吉田常1(54)は「(大野は)農業に魅力があると発信している。若く活力にあふれる希望の光と言えるだろう」と評価する。
 大野は果物の栽培面積を拡大したいと考えている。モモ、ナシ、リンゴの品質をさらに高める方策も探っていく。「県産の農産物の味はどこにも負けない自信がある。10年先、20年先に農業が花形産業になるよう頑張る」と誓う。(文中敬称略)

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