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(33)TPP発効に備え

「相馬土垂」を手にする菊地。今年から本格的な栽培に乗り出す

 相馬土垂(どだれ)。20年ほど前まで、相馬地方などで栽培されていたサトイモの在来種だ。味は大きく変わらないが形が細長い。相馬市の大野村農園代表を務める菊地将兵(30)は今年、消えかけていた伝統野菜の本格的な栽培に乗り出す。
 一部の農家によって、昭和40年から50年代にかけて栽培されていたサトイモがあったと人づてに聞いた。復活させて、相馬の農業に新たなブランドを生み出したい-。夢が広がった。しかし、地元の文献に記述があるだけで、写真もなかった。情報を求めて高齢の農家や県、市、種苗店、直売所などを訪ね歩いたが空振りの日々が続いた。


 諦めかけていた昨年11月、形が似たサトイモを新地町の農家でようやく見つけた。何10年も前に相馬市の農家から種を譲り受け、栽培を続けてきたという。
 20年ほど前まで生産していた南相馬市鹿島区の農業渡部忠正(69)に現物を持参した。親の代から「どだれ」と呼んで育て、東京方面などに出荷していた。「間違いない。どだれだよ」。その言葉に体が震えた。
 現在、貴重な種芋をビニールハウス内に埋めてある。5月に植えて、秋に収穫する予定だ。数を増やし、来年以降の出荷を目指していく。伝統野菜の復活に懸ける菊地の情熱に触れた渡部。「農業に真剣に取り組んでいる若者の姿は自分の励みになる。珍しい形をしたどだれは間違いなく市場で注目を集めるだろう」と期待している。


 菊地が新たなブランド野菜作りにこだわるのは昨年秋、大筋でまとまった環太平洋連携協定(TPP)を意識しているためだ。発効すれば、関税の引き下げられた安い輸入農産物が市場に大量に出回ると予想する。「無農薬」「高品質」といったセールスポイントがなければ、国内産は太刀打ちできなくなるだろうと深刻に受け止めている。地元産の餌にこだわった鶏卵を生産する。有機栽培の農産物を売り込む。相馬にしかない伝統野菜をアピールする。こうした取り組みを続け近い将来、待ち構えている荒波に対抗しようと策を練っている。
 最近、農園を訪ねてくる消費者が増えるようになった。ニワトリの飼育や野菜の栽培方法を丁寧に説明し、農業に込めた思いを語る。親子向けの収穫体験事業を企画している。食の大切さを伝えていきたいと願う。(文中敬称略)

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