東日本大震災

「明日に挑む-芽吹く福島の力」アーカイブ

  • Check

(34)会津伝統野菜を守る

ビニールハウスで荒久田茎立の花粉を飛ばす生徒たち

 野菜は列車の音を聞いて育つ。
 会津坂下町中心部のJR会津坂下駅近くにある会津農林高の敷地内にはビニールハウスが立ち並ぶ。中では黄色い花を付けた会津伝統野菜の荒久田茎立(あらくだくきたち)が育つ。はるか昔から代々、種を取り次代につないできた。農業園芸科野菜専攻班の生徒たち19人が茎を優しく揺らし、花粉を飛ばす。種が宿り茎の一部が膨らむ。5月に採種し、また秋にまく。来季は食用となる葉を50キロ程度収穫する予定だ。
 会津小菊かぼちゃ、余蒔(よまき)きゅうり、立川ゴボウなどを含め、学校では12種類の会津伝統野菜を栽培している。先人が守り続けてきた農作物を広め、ブランド化を目指す。

 「古里に伝わる野菜を自分たちの手で育ててみないか」。生徒に提案したのは会津農林高教諭の江川篤(38)だった。赴任した翌年、東日本大震災と東京電力福島第一原発事故が起きた。畑に放射性物質が含まれていないか心配し、土を使わず水耕栽培に取り組む子どもたちの姿に心を痛めた。
 個性的な実習を体験させてあげたい。全国的に伝統野菜が注目を集めていた。会津にはないのだろうか。県会津農林事務所に問い合わせたところ、生産農家の長谷川純一(45)=会津若松市=を紹介された。会津小菊かぼちゃなどの種を分けてもらい、平成25年に校内で栽培を始めた。
 会津小菊かぼちゃは戊辰戦争の籠城戦で保存食として活用された歴史がある。生命力が強い。苗を植えてから3カ月程度で収穫できた。しかし、いざ食べてみると甘さが足りずおいしくなかった。

 「せっかく種を頂いた会津小菊かぼちゃ。一体、どうすれば食材に使えるだろうか」。生徒たちは頭を抱えた。皮が硬く調理しづらい。では粉状にしてはどうか。喜多方市にある会社の協力を得て、粉末化し調理法を考えた。学校の食品加工科の生徒に相談し、プリンに混ぜてみた。「これは、いける」。風味が良かった。
 油と相性がいいことも分かってきた。薄くスライスしてソテーにすると味わいが増す。みそ汁の具にも合う。素材を生かした食べ方を次々に考案し、改良を重ねている。会津農林高発の6次化商品を送り出したい。夢が大きく広がっていく。(文中敬称略)

※会津伝統野菜
 会津で江戸時代に書かれた農業指導書「会津農書」に記されている野菜。会津小菊かぼちゃ、かおり枝豆、アザキ大根、とこいろ青豆など17種類ある。在来種のため生命力が強く、農薬や化学肥料を使わずに栽培できる利点がある。

カテゴリー:明日に挑む-芽吹く福島の力

「明日に挑む-芽吹く福島の力」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧