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(35)地元の味、全国に

生徒たちが育てた会津小菊かぼちゃ(奥)と余蒔きゅうり

 会津伝統野菜の栽培に励む会津坂下町の会津農林高農業園芸科野菜専攻班の生徒19人には、かけがえのない「パートナー」がいる。会津小菊かぼちゃの生産を続けている会津若松市門田町飯寺の農業長谷川純一(45)だ。
 会津小菊かぼちゃは地元で「にいでらかぼちゃ」として知られ、約400年前から作られてきた。しかし、戦後に甘みの強い西洋かぼちゃが普及したのに伴い、栽培農家は徐々に減っていった。産地だった飯寺地区では長谷川を含め2軒となった。
 この種を絶やしてしまったら2度と作れなくなる。強い危機感を抱き、地元の農家とともに会津伝統野菜の保存会「人と種をつなぐ会津伝統野菜」を結成した。生徒たちは平成26年3月、メンバーに加わった。

 スーパーマーケットに並ぶ農作物のほとんどは味を良くしたり、収量を増やしたりするため品種改良を重ねてきた。一方、会津伝統野菜は土地に根づいた在来種で、収穫した種に手を加えず現代まで受け継いできた歴史がある。
 先人たちも口にした味、古里の食文化が失われることは何としても避けたい。長谷川は未来の地域農業を担う生徒たちに、会津伝統野菜の歴史や栽培方法を教えた。貴重な種を次代に伝えていってほしいとの思いを込めて。農業園芸科3年の渡部虎那太(こなた)(17)は「長谷川さんがいなければ学校で栽培できなかっただろう。さらに協力して地元の味を全国に広めたい」と意欲を見せる。

 長谷川は10年ほど前、会津伝統野菜の余蒔(よまき)きゅうりを復活させた。国立研究開発法人「農業生物資源研究所」が運営する農業生物資源ジーンバンクに保存されていた種を譲り受けて栽培を始めた。
 味は苦みやえぐみがなく、みずみずしいが知名度がないため全く売れなかった。「普通のキュウリよりおいしい」。家族の言葉を支えに作り続けた。会津若松市の料理人が食材として使ってくれた。会津農林高の生徒も生産を始め、地元のスーパーなどで店頭販売した。徐々に存在が知られるようになり、購入する人が現れるようになった。
 長谷川は「古くから会津地方に伝わる野菜を知ってもらおうという子どもたちの取り組みには本当に頭が下がる。ファンが確実に増えてきた」と感謝している。(文中敬称略)

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