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浪江、農業者帰還の糧に 新農作物産地化へ

ネピアグラスを植える(左から)渡部さん、泉田さん、新妻さん

 東京電力福島第一原発事故による全町避難が続く浪江町で、新たな農作物の産地化を目指す動きが出ている。地元農業者によるイネ科の牧草の実証栽培の苗植えが15日、町内で行われた。20日には地元企業が中心となり漢方薬などに使われる「甘草(かんぞう)」の実証栽培が始まる。町は平成29年3月の避難指示解除に向け、「農業者らの帰還意欲の向上につながる」と期待する。

■イネ科の牧草「ネピアグラス」 年2回収穫可能
 実証栽培が始まったイネ科の牧草は「ネピアグラス」。JAの元幹部らでつくる一般社団法人南東北復興総合研究所が事業主体となり、地元農業者らが栽培に当たる。この日の苗植えは避難指示解除準備区域にある浪江町北幾世橋の泉田重章さん(63)=町議、農業=のほ場で行われた。泉田さんのほか、地元の新妻一信さん(63)、渡部好三さん(52)が参加し、丁寧に手植えした。
 ネピアグラスは国内では九州地方を中心に栽培されている。飼料に用いられているほか、水素ガスエネルギーとしての利用研究も進んでいる。泉田さんらによると、非常に生命力が強く育成に手間が掛からない上、年に2回収穫できるため、コメと同等かそれ以上の収益も期待できるという。
 弘前大が協力し、土壌の放射性物質濃度やネピアグラスの放射性物質の吸収率などについて調査する。泉田さんは「今年度に育成した苗を使い、来年度は3ヘクタールで作付けする。栽培の輪を広げていきたい」と意気込む。
 同町は農家数約1400戸、耕地面積は約2700ヘクタールと原発事故前は農業が町の基幹産業だった。現在、町内で営農しているのは実証栽培、試験栽培などごく一部。避難指示解除準備、居住制限両区域の農地除染の進捗(しんちょく)率は3月末時点で37%にとどまっている。帰還困難区域の除染はまだ見通せない。農業の復活は町にとっても大きな課題だ。
 馬場有町長は「町としてもできる限り支援したい。取り組みが軌道に乗れば、農業者の帰還意欲向上にもつながるはず」と期待を込めた。

■20日に苗植え雇用促進期待 甘草
 甘草の実証栽培は浪江町北幾世橋地区で始まる。地元の建設業ニーズ(三瓶浩徳社長)が三菱樹脂(本社・東京)から苗の提供を受け、全量を同社に販売する契約栽培となる。
 20日に苗植え式を行い、地元農業者のほ場約1アールに作付けする。将来的には甘草生産者組合を発足させる考え。同社の担当者は「地元農家と連携し、雇用や帰還促進につなげていきたい」としている。

■原発事故後3度目の田植え
 浪江町酒田では15日、原発事故後3回目となるコメの田植えが行われた。
 浪江の農業の現状を知ってもらおうと町が招いた県内外の大学生約50人が参加した。酒田農事復興組合の松本清人さん(77)の水田13アールにコシヒカリの苗を植えた。新潟大農学部4年の松原達也さん(22)は「浪江には初めて来た。これからも復興に関わりたい」と語った。
 町内では今年計約2.1ヘクタールを作付けする予定。放射性物質のモニタリングを経て、昨年に続きJAを通じて販売する。これまで放射性セシウムは食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)未満。

カテゴリー:福島第一原発事故

浪江町で田植えに臨む学生ら

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