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海の経験 若者に伝承 漁師 菱川豊さん 83 相馬

再開したホッキ貝漁に生き生きとした表情で臨む菱川さん

■「いつか相馬の海に活気」
 1日、県内のホッキ貝漁が解禁される。東日本大震災、東京電力福島第一原発事故の影響で出漁予定はなく、寂しい初日を迎える。相馬市尾浜の菱川豊さんは31日、津波で浸水した自宅の片付けに追われた。「例年ならば心はやる時期なのだが...」。愛船を失った60年を超えるベテラン漁師はため息をついた。「原発事故が収束しない限り、漁業復興の見通しは立たない。それでもいつか相馬の海に活気が戻ることを期待したい」
 【平成23年6月1日付・19面】

 6年ぶりにホッキ貝漁が再開された。まだ試験操業だが、これまでの海中がれきの撤去作業や放射性物質検査でホッキ貝を捕るのに比べれば気持ちは晴れやか。漁は漁だ。心が躍る。
 震災の津波で長年の相棒だった「豊昌丸」は壊れた。80歳を超え新しい船を造るのは諦めた。今回は仲間の船に乗せてもらって出漁している。

■「やっぱり海はいい」
 試験操業が始まると聞いた時、船に乗るかどうか迷った。船はないし、年も取った。これほど長く漁から離れたことがなかったので、体が持つか不安だった。でも、海から離れることはできなかった。漁師生活は60年以上。底引き網漁から始まってホッキ貝漁にも30年以上関わった。思ったように水揚げできた時の満足感は何物にも代えられない。
 試験操業初日の3日と9日に出漁した。しばらくぶりの本格的な出漁に最初は少し手間取ったが、すぐに感覚は元に戻った。根っからの漁師なんだなと思った。試験操業は原則週1回。震災前の週6回に比べれば物足りなさを感じるけど、海に出る日が待ち遠しくて仕方がない。

■「再び港に活気を」
 家は松川浦のそば。隣にあった相馬双葉漁協の水産物直売センターは津波に襲われた。休日ともなると観光客でにぎわった光景は今はうそのよう。早く活気に満ちた港町に戻ってほしい。
 若い漁師が懸命に試験操業に取り組んでいる。漁業の復興は少しずつ進んでいる。元通りになるまで自分は生きていられないかもしれないが、若い者に経験を伝えていきたい。でも、まだまだ若い人には負けない。経験は追い越されないからね。

カテゴリー:「3.11」それぞれの5年

水産物直売センターわきで自宅を整理する菱川さん【平成23年6月1日付・19面】

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