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「賠償の底流-東京電力福島第一原発事故」アーカイブ

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第8部 「一括」の先行き 岐路に立つ事業所(48) 個別対応どこまで 除染終了展開見えず

県建設業協会の事務所内の復興事業・原子力発電所事故損害賠償対策室。事業継続の不安などが寄せられている

 福島市五月町の県建設業協会の事務所の一室に「復興事業・原子力発電所事故損害賠償対策室」がある。日々、寄せられる相談の中で目立ち始めているのが除染作業終了後の事業継続への不安の声だ。
 理事兼相談役の高木明義さん(66)は除染業務講習会の資料に視線を落とし、不安を口にした。「除染特需が終わり、営業損害賠償も打ち切られたら経営が立ち行かなくなる事業所が相次ぐかもしれない」


 東日本大震災が起きるまで公共工事は縮減傾向にあった。そんな中、東京電力福島第一原発事故後の除染は、比較的参入が容易な新たな公共事業として県内の建設業界を支えてきた。
 除染作業は表土の除去やのり面の除草、アスファルトの高圧洗浄といった単純作業が多く、人手不足や後継者難に悩む事業所でも進出しやすい。協会によると、加盟約250社のうち半数近くが除染関連業務に従事し、収入に占める割合が高い事業所も少なくない。賠償金と除染事業で運転資金をつないできた事業所もあるという。
 しかし、除染作業は平成27年度をピークに減少している。帰還困難区域外の双葉郡内などで実施している国直轄除染と、汚染状況重点調査地域に指定された36市町村の除染はいずれも今年度末で終了する見通しだ。
 営業損害賠償も避難区域外では27年8月以降の年間逸失利益の2年相当分が一括して支払われれば終了となる可能性がある。東電は「その後は個別事情を考慮して対応する」としているが、将来を不安視する声は依然、根強い。


 「原発事故をきっかけに除染事業を業務の中心に切り替えた事業所もある。一体どれだけの事業所が除染に従事していた期間のブランクを埋め、元の仕事を再開できるのか」。須賀川市で総合建設業を営む県商工会議所青年部連合会長の菊地大介さん(43)は除染事業と一括賠償が終了した後、閉鎖の連鎖が起きる事態を懸念する。業界からは、復興関連事業に頼り過ぎたのではないか-との自省の声も漏れる。
 ただ、建設業界の衰退は復興の停滞にもつながりかねない。県建設業協会は県原子力損害対策協議会を通じ、一括賠償後も避難先で営業を強いられている事業者や住民の帰還が進まず仕事のない事業者もいる現状を踏まえた賠償を継続するよう東電への要請を強める考えだ。だが、一括賠償後、岐路に直面した事業所を支援する手だては「個別対応」というオブラートにくるみ込まれ、つかみどころがない。

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