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双葉病院訴訟 患者失踪 東電に賠償命令 東京地裁2200万円支払い判決

判決内容について見解を述べる新開弁護士

 東京電力福島第一原発事故後、入院していた大熊町の双葉病院から行方不明となり、失踪宣告で死亡扱いとなった認知症の女性=当時(88)=の遺族が東電に約4400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁(水野有子裁判長)は10日、原発事故と死亡との因果関係を認め、東電に慰謝料など約2200万円の支払いを命じた。双葉病院関連の訴訟の判決は5件目で、失踪宣告で死亡扱いとなった患者の判決は初めて。

 水野裁判長は判決理由で、原発事故がなければ病院職員が避難することはなく女性の外出を防げた-と指摘。「女性は栄養状態が良好で直ちに死亡する身体状態ではなかった。事故がなければ入院を継続し、死亡しなかった」と結論付けた。
 東電は東日本大震災の停電で病棟の電子錠が開き、女性が病院の外に出た-などと主張し、原発事故との因果関係を否定していた。
 損害賠償額(慰謝料)について地裁は原告側の「4000万円程度が妥当」との主張に対し、双葉病院関連の訴訟で確定した判決と同額の2000万円に設定。過去4件の判決は患者の既往症などを理由に2~3割程度減額したが、今回は東電側が主張した持病の影響や自衛隊の救出活動に落ち度があった-とする減額理由を全て退けた。この他、約200万円を弁護士費用とした。
 判決などによると、女性は重度の認知症で平成23年3月14日午後を最後に行方不明となり、同月15、16の両日に自衛隊が捜索しても発見できず1年以上が経過。女性の遺族は24年12月に家裁相馬支部に失踪宣告を申し立てた。25年10月に失踪宣告の審判が確定し、女性は民法上、死亡扱いとなった。
 双葉病院関連の訴訟は計10件提起されている。原発事故と患者死亡との因果関係を認める判決が確定した4件のほか、千葉地裁と福島地裁で計2件の和解が成立している。他に東京地裁と地裁いわき支部で計3件が係争中となっている。

■「主張認められた」原告代理人
 判決後、原告代理人の新開文雄弁護士らが東京都の司法記者クラブで会見した。東京地裁が争点の原発事故と死亡との因果関係を認定したことについて「主張が認められた」と評価した。
 一方、判決で損害賠償額が請求額の約半分に減額されたことについては「交通事故の慰謝料と同程度の額。(これまでの4件の判決と同様に)原発事故の特殊性を評価してもらえなかった。これまでのケースと違い、今回は女性の遺体が見つかっておらず、遺族の苦痛は計り知れないことも考慮してほしかった」と語った。控訴については「原告7人と相談して決めたい」とした。

■原告男性は納得の様子
 判決後、女性の弟で相馬市に住む原告の男性(84)は新開弁護士から判決内容を電話で聞くと、「ありがとうございました」と納得した様子で答えたという。新開弁護士は「親族を亡くした悲しみは癒えないが、判決は原告にとって一つの区切りになるはず」と話した。

■真摯に対応する 東電
 判決を受け東電は「判決内容を確認した上で真摯(しんし)に対応する」とコメントを発表した。

■「東電の責任司法が認定」 大阪市立大教授
 これまで4件の訴訟で東電は原発事故と患者死亡との因果関係を争わずに減額を主張したが、今回は因果関係自体を否定した。
 東京地裁は判決で東電の主張の多くを退けた。原発事故の賠償について研究している大阪市立大の除本(よけもと)理史教授は「改めて東電の責任の重さを司法が認定したと言える」と指摘した。東電は今回の判決内容を踏まえ、原発賠償に対応する必要があるとした。

カテゴリー:福島第一原発事故

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