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【震災から5年6カ月】避難区域面積2/3に 住民帰還取り組み進む

※東京電力福島第一原発事故による避難区域※ 放射線量に応じて(1)原則立ち入り禁止の「帰還困難区域」(年間被ばく線量50ミリシーベルト超)(2)日中の立ち入りが可能な「居住制限区域」(同50ミリシーベルト以下20ミリシーベルト超)(3)帰還に向けた環境整備を進める「避難指示解除準備区域」(同20ミリシーベルト以下)−の3つがある。

 東京電力福島第一原発事故から11日で5年半を迎える。原発周辺の12市町村に設定された避難区域は解除が相次ぎ、全体面積は約1150平方キロから3分の2の約725平方キロにまで縮小した。政府は残る町村の居住制限、避難指示解除準備の両区域を平成29年3月末までに解除する方針だが、生活基盤の復旧・整備など住民帰還に向けた課題は山積している。各自治体の状況を追った。


■復興拠点に町事務所開設 大熊町
 4月に復興拠点の大川原地区に町事務所を開設した。8月には東京電力の独身寮が完成し、社員が福島第一原発に通勤するようになった。町が希望する平成29年度のできる限り早い時期の帰還開始に向け、居住制限、避難指示解除準備両区域の解除を国に求めている。お盆期間に実施した初めての特例宿泊には40人が登録した。

 課題は9割近い町民の自宅がある帰還困難区域の復興だ。下野上地区約95ヘクタールで先行除染が近く終了する見込み。さらに、その周辺約305ヘクタールでも行われる見通しだが、帰還困難区域の残る約4500ヘクタールは実施のめどが立っていない。


■準備宿泊、17日から開始 富岡町
 早ければ平成29年4月の避難指示解除を目指し、17日から準備宿泊が始まる。

 町内では10月に町立診療所、11月に複合商業施設の一部がそれぞれ開所する予定となっている。

 一方、依然として町民から放射線に対する不安の声が上がっている。環境省の調査では、6月30日時点の居住制限、避難指示解除準備両区域の平均空間放射線量は毎時0・87マイクロシーベルト。除染前に比べて約54%低減したが、町議会などは丁寧な追加除染を求めている。

 夏休み期間に行われた特例宿泊の登録者は110人だった。


■町診療所、来年3月開所 浪江町
 平成29年3月の帰町開始を目指す中、1日に居住制限、避難指示解除準備両区域を対象にした特例宿泊が始まった。8月31日までに307人が申し込んだ。

 町は自宅に寝泊まりして気付いた課題を町民から聞いた上で、避難指示解除に向けた準備宿泊の実施時期を検討する。

 住民帰還に向け、医療機関や商業施設の再開をはじめとした生活環境の整備が必要となる。町は診療所の建設を進めており、来年3月の開所を目指している。町役場敷地内に10月、飲食店や雑貨店が入る仮設商業施設がオープンする。


■沿岸部に産業拠点構築へ 双葉町
 避難指示解除準備区域となっている沿岸部の両竹・浜野地区の除染が昨年度で完了し、8月からは消波堤などの海岸施設工事が始まった。おおむね平成32年から37年を目標に地区内に町の産業拠点を構える計画。県は震災と原発事故の記録や教訓を後世に伝えるアーカイブ拠点施設の設置を決めた。東側に隣接し浪江町にまたがる地区には復興祈念公園が整備される。

 町の96%を占める帰還困難区域では、JR双葉駅西側の約40ヘクタールで今秋、除染が始まる。新たな市街地となる復興拠点として整備する。


■交流センターがオープン 飯舘村
 村内の居住制限、避難指示解除準備両区域は平成29年3月末に解除される。長期宿泊の登録者数は9月1日現在、341人で対象者の6%に当たる。

 基幹産業の農業再開に向けた環境整備が課題。環境省による農地除染は年内の完了を目指す。田畑には約190万袋の除染廃棄物が山積みのままで、村は同省に撤去時期の明示を求めている。

 8月に村交流センター「ふれ愛館」が開館し、今月1日には村唯一の診療所「いいたてクリニック」が5年2カ月ぶりに診療を再開した。復興拠点の深谷行政区に整備する道の駅「までい館」は来夏オープン予定。


■生活支援へ住民懇談会 川俣町山木屋
 政府は地区内の居住制限、避難指示解除準備両区域を平成29年3月末に解除する方針で、月内にも正式決定する。昨年8月に始まった準備宿泊の登録者は今年8月10日現在、116人で全住民の約10%。

 国と町は放射線量に不安を持つ住民のため、除染に関する要望に応える「除染対策会議」を近く発足させる。住民からは昨年の豪雨災害による被害箇所の復旧や営農再開に向けた支援充実を求める声が上がっている。

 町は政府が解除時期を正式決定した後、帰還後の生活について住民と話し合う懇談会を開く。


■避難区域を巡る動き(平成28年3月11日以降)
3月12日 ▼飯舘村が同27日まで特例宿泊
  15日 ▼川内村に公設民営複合商業施設「YO−TASHI」がオープン
  17日 ▼富岡町が同23日まで初の特例宿泊
4月 1日 ▼大熊町が大川原連絡事務所を設置
   6日 ▼富岡町が同17日まで特例宿泊
  16日 ▼飯舘村が5月22日まで特例宿泊
  21日 ▼楢葉町で東邦銀行楢葉支店が営業再開
  29日 ▼富岡町が5月8日まで特例宿泊
5月 1日 ▼富岡町から群馬県高崎市に避難していた社会福祉法人友愛会が、広野町で障害者支援施設「光洋愛成園」など7施設の運営開始
6月12日 ▼葛尾村の居住制限、避難指示解除準備の両区域を解除
      ▼葛尾村と田村市立都路診療所を結ぶ無料乗り合いバスが運行開始
  14日 ▼川内村の避難指示解除準備区域を解除。村内全ての避難区域が解消
7月 1日 ▼飯舘村が29年3月31日の避難指示解除に向けた長期宿泊を開始
      ▼楢葉町で蒲生歯科医院が診療再開
  12日 ▼南相馬市の居住制限、避難指示解除準備の両区域を解除
  23日 ▼富岡町が8月21日まで特例宿泊
8月11日 ▼大熊町が同16日まで初の特例宿泊
  31日 ▼政府が帰還困難区域の対応に関する基本方針を決定。

9月 1日 ▼浪江町が同26日まで初の特例宿泊

■生活環境整備急ぐ 避難解除各市町村 医療機関や商業施設
 居住制限、避難指示解除準備両区域が解除された各市町村は住民帰還に向け、インフラ復旧や除染、商業施設の整備などを進めている。


■南相馬市
 7月12日に解除された居住制限、避難指示解除準備両区域に帰還した住民は8月26日現在、住民登録者1万658人のうち933人で8・8%となっている。このうち777人が戻った小高区では10月中にコンビニエンスストアが開店する見通し。医療機関は市立小高病院と民間の二診療所が再開したが、入院できる施設はない。


■川内村
 下川内の荻・貝ノ坂地区に設定された避難指示解除準備区域が6月14日に解除され、村内の避難区域は解消された。帰還者数は8月1日現在、村民2750人のうち1830人で6割強まで回復した。村は生活環境の向上に向けて、中心部に複合商業施設を整備した。新たな住民を呼び込もうと、一人親世帯の移住支援に取り組んでいる。


■葛尾村
 6月12日に居住制限、避難指示解除準備両区域が解除された。9月1日現在、両区域の住民登録者数(6月13日以降の転入者を除く)1338人のうち、村内で生活を再開した住民は85人。新たな転入者と合わせると92人が暮らしている。懸案だった被災家屋の解体は事業者が決まり、平成29年3月までの工事完了を目指している。


■楢葉町
 避難指示解除準備区域が解除され5日で丸1年となった。9月2日現在、一週間のうち4日以上、町内に滞在しているのは町民7340人のうち、681人。6号国道沿いにコンパクトタウンを整備する。2月には県立大野病院付属ふたば復興診療所「ふたばリカーレ」が開所した。スーパーと飲食店からなる商業施設を設ける。


■田村市都路町
 23年9月に福島第一原発から半径20キロ圏外の緊急時避難準備区域、26年4月に半径20キロ圏内の避難指示解除準備区域が解除された。5月末現在、住民基本台帳に登録されている2563人のうち、1759人が帰還している。高齢者向け公的賃貸住宅の建設や都路診療所の医療設備充実などを図った。


■広野町
 23年9月に緊急時避難準備区域が解除された。震災発生時の人口は約5500人で、8月25日現在、町内に居住しているのは2818人。町役場前の町有地に公設民営商業施設が完成した。JR常磐線広野駅東側は「駅東側開発整備事業」が進む。


■帰還困難区域対応政府の基本方針 指示解除33年度目標 復興拠点、29年度から整備

 政府は8月31日、原発事故に伴う帰還困難区域の対応に関する基本方針を決定した。区域内の復興拠点を平成29年度から整備し、33年度を目標に避難指示解除を目指す。

 基本方針は自民、公明両党から提出された第六次提言を踏まえて策定した。市町村が県と協議した上で復興拠点の整備計画を策定する。国は関連する法制度を整え、計画を認定する。29年度から必要な予算を確保し整備事業を進める。

 区域は新たに再編せず、整備した復興拠点から部分的に解除していく。復興拠点に位置付けない地区でも、市町村の伝統や文化のシンボルとして交流拠点を整備する場合は、国が支援する。

 目標実現に向け、インフラ整備と除染を一体的に進めるとした。ただ、除染の財源を東電に求めるかどうかは明記しなかった。除染費用は原則として東電の負担だが、新たな方策で国費が投入されれば事実上の東電救済となり、反発が出る可能性がある。

 安倍晋三首相は復興推進会議と原子力災害対策本部の合同会合で、関係法案を次期通常国会に提出し、来年度からの予算措置に向けて作業を進めるよう閣僚に指示した。 帰還困難区域を巡る政府方針に対し、関係自治体からは「復興拠点から外れた地域の住民も戻れるよう、取り組みを進めてほしい」とする声が上がっている。

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