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【震災から5年6カ月】福島第一原発 廃炉 デブリ処理難関 圧力容器底にに残存か 2号機 今冬にもロボ炉内投入

 東京電力福島第一原発では3、40年かかるとされる廃炉に向け、最大の難関である溶融燃料(燃料デブリ)取り出しの調査が始まった。一方、汚染水対策の「凍土遮水壁」は運用開始から半年ほどが経過したが、十分な効果が表れていないとする指摘がでている。放射性物質のトリチウムを含む処理水の処分方法は決まらず、原発構内のタンクにたまり続けているなど課題は山積している。


 東電は3月から7月にかけて、事故発生当時、核燃料が原子炉内にあった1~3号機のうち、2号機で「ミュー粒子」による透視調査を実施した。この結果、圧力容器の底に燃料デブリが残存しているとみられることが分かった。

 大まかな位置は捉えたが、取り出し工法を絞り込むには燃料デブリの分布や量、炉の損傷具合などさらに詳しい状況を把握する必要がある。このため、撮影機能を備えた遠隔操作ロボットを今冬にも炉内に投入する。

 1号機は昨年4月にロボットで調査し、画像の撮影や放射線量の測定に成功した。平成28年度内の再調査に向け、新型ロボットを開発中だ。

 一方、使用済み核燃料プールからの燃料取り出しに向けた準備作業も本格化している。1号機ではプール内にある392体の燃料を取り出すための準備が進む。原子炉建屋上部に取り出し作業の妨げとなる大型がれきがあるため、建屋カバーを解体してがれきを撤去する。

 615体ある2号機は32年度、566体ある3号機は29年度の取り出し開始を予定している。4号機は26年12月に1533体全ての移送を完了した。


■福島第一原発を巡る動き(平成28年3月11日以降)
3月31日 ▼建屋海側の凍土遮水壁の凍結を開始
5月27日 ▼浄化処理後に残る放射性トリチウムについて、政府の有識者会議が処分の方法別に期間と費用を試算した報告書を大筋でまとめる。5種類の処分方法のうち、海洋放出が最も短期間、低費用で実施できるとの案を公表
6月 6日 ▼建屋山側の凍土遮水壁の凍結を開始
  16日 ▼原発事故直後、炉心溶融が起きていたにもかかわらず東電が炉心損傷と説明していた問題で、同社が設置した第三者検証委員会は、当時の清水正孝社長が「炉心溶融という言葉を使うな」と指示したとする報告書を東電に提出
  21日 ▼原発事故当初、清水社長が「炉心溶融という言葉を使うな」と社内に指示していた問題で、同社の広瀬直己社長が隠蔽(いんぺい)を認め、謝罪
7月13日 ▼原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)が新たな戦略プランを公表し、溶融燃料を建屋内に閉じ込める「石棺」方式について初めて言及
  15日 ▼NDFが戦略プランから「石棺」の表現を削除する意向を表明、県に謝罪
  19日 ▼東電が凍土遮水壁について、完全に凍結させることは難しいとの見解を表明。方針転換とも取れる内容に県や地元市町村が反発
  20日 ▼東電が凍土遮水壁について完全に凍結させることは難しいとの見解を示したことに関し、広瀬社長が「説明が悪かった」と釈明。「段階的に閉合範囲を増やして最終的に100%閉合を目指している」との見解をホームページに掲載
      ▼NDFが戦略プランから「石棺」の文言を削除した修正版を公表
  28日 ▼東電が「ミュー粒子」で2号機の原子炉内を調査した結果、燃料デブリが圧力容器の底に残っているとみられると発表
8月25日 ▼東電が2号機の溶融燃料取り出しに向けた格納容器の内部調査を今冬に開始すると発表
 
■廃炉研究ルポ 楢葉の「モックアップ施設」 実物大模型で補修実験

 今年4月から本格運用が始まった楢葉町の日本原子力研究開発機構(JAEA)の楢葉遠隔技術開発センター(モックアップ施設)。事故で破損した福島第一原発の格納容器補修に向けた実験が年内にも始まる。

 センター試験棟に入ると、2号機格納容器の一部を実物大にした模型が目に飛び込んできた。高さ18メートルある。模型の隣で原子炉建屋を再現した施設の建設工事が進められていた。燃料デブリ取り出しに向け、国際廃炉研究開発機構(IRID)は模型と施設を使い、格納容器補修に向けた実験を行う。

 模型の背後に目を向けると、高さ8・5メートルある円筒形の銀色の物体が置かれていた。内部には水が入っており、ロボットが水中で稼働できるかどうかを確認する試験用水槽だ。常温から60度まで温度調整ができ、濁り水や塩水を使用するのも可能だ。側面に設けられた窓から内の状況を見ることができる。

 試験用水槽の隣にはモックアップ階段があった。福島第一原発内の実物を模しており、遠隔操作でロボットが上ったり下りたりできるかどうか確認する。

 JAEAの川妻伸二楢葉遠隔技術開発センターモックアップ試験施設部長(58)は「研究者や技術者が集い、新たに創造された技術をこの地から発信できる施設にしていきたい。廃炉に貢献し、福島の復興につなげる」と語った。(いわき支社報道部・横山 雄介)

■汚染水対策 凍土遮水壁効果に疑問 建屋流入量減少見られず

 福島第一原発では、原発事故で溶けた燃料を冷却した水と地下水が混ざり汚染水が発生している。東電は建屋に流入する1日約150トンの地下水を平成28年度までに百トン未満まで減らす目標を掲げた。切り札とされる凍土遮水壁の運用開始後、流入量に大きな変化はなく効果を疑問視する声が上がっている。

 東電は汚染水対策として、平成26年5月に地下水が原子炉建屋に流れ込む前にくみ上げる「地下水バイパス」、27年9月には1~4号機建屋付近の地下水をくみ上げる「サブドレン」をそれぞれ稼働させた。これらの対策で建屋への流入量が1日約400トンから約150トンまで減少した。

 今年3月には凍土遮水壁の運用を始めた。1~4号機を囲むように凍結管を埋め、全長約1・5キロ、深さ約30メートルの氷の壁を作って建屋への地下水流入を防ぐ。現在は3工程のうちの第一段階として、山側の7カ所を残した95%に当たる範囲で凍結を進めている。

 東電は凍結範囲の大半で地中温度が零度以下となり、一部の地下水の水位が遮水壁を境に下がるなど、効果が表れていると強調する。ただ、凍結後に減るとみていた建屋への流入量や建屋海側の地下水くみ上げ量に大きな変化はみられず、原子力規制委員会などからシステムが機能しているか疑う意見が出ている。

 委員会は遮水効果を確認次第、凍結範囲を95%以上に広げる「第2段階」への移行を了承するとしているが、時期は不透明だ。


■構内保管量87万トン 汚染水 最終処分方法結論出ず

 福島第一原発構内のタンクに保管されている汚染水の総量は8月25日現在、約87万トン。このうち約68万トンは多核種除去設備(ALPS)で浄化処理済みの水だが、放射性物質のトリチウムを含んでいる。1日平均400トンずつ増え続けており、東電関係者は「早く手を打たないと保管場所が足りなくなる」と危機感を募らせている。

 浄化処理でセシウムやストロンチウムなど62種類の放射性物質は除去されるが、高い濃度のトリチウムが残る。世界的にトリチウム水は薄めるなどして濃度基準を下回れば海洋への放出が認められているが、処理水の最終的な処分方法は今もって結論が出ていない。政府の有識者会議は5月、「海洋放出が最も短期間・低費用」との案を示したが、漁業者らの理解は得られていない。

 保管用タンクの交換も課題の一つだ。当初、簡易型(フランジ型)が導入されたが、接合部から汚染水漏れが相次いだ。東電は継ぎ目のない溶接型への切り替えを進めているが、タンク総数約千基のうち5分の1以上に当たる約210基がフランジ型のままとなっている。


■「石棺」に県内猛反発 戦略プランNDFが修正

 福島第一原発の廃炉技術の研究・開発を担う原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は7月、新たな戦略プランで溶融燃料を建屋内に閉じ込める「石棺」方式について初めて言及した。取り出しから閉じ込めへの方針転換とも受け止められる内容に県や関係市町村は猛反発し、機構は数日後に文言を修正した。

 修正前の戦略プランは溶融燃料の取り出しを大前提としながらも、「今後明らかになる内部状況に応じて柔軟に見直しを図ることが適切」と、閉じ込めについて選択の余地を残すとも受け取れる内容だった。機構は後日、石棺の問題点について見解を示すための記載だったと釈明し、石棺方式の採用を改めて否定した。

 石棺は溶融燃料を残した原子炉をコンクリートで覆う方式。旧ソ連のチェルノブイリ原発の廃炉で採用されたが、老朽化が問題となっている。

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