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(39)技を極める 異業種からも注目

伊勢志摩サミットで展示された妖精の羽のドレスとストール(右手前)

 一本の電話が川俣町の斎栄織物常務を務める斎藤栄太(35)の心をときめかせた。相手は徳島県の徳島大医学部の関係者だった。再生医療への応用が期待されるiPS細胞の研究に、同社が開発した世界一薄く軽やかな絹織物「妖精の羽(フェアリー・フェザー)」を使いたいという。
 細胞の培養に用いる皮膜はできる限り薄い素材が求められる。絹は培養液を通し、熱に強く殺菌効果もあるため、条件を満たす妖精の羽に白羽の矢が立った。現在は徳島大の取り組みに欠かせない存在になっている。

 妖精の羽の開発で、斎栄織物は平成24年2月、優秀な製造業者をたたえる「ものづくり日本大賞」(経済産業省など主催)の最高賞を受けた。東北地方の企業で初めての快挙だった。
 それ以後、異業種からの注文が次々に舞い込んだ。軽さと耐熱性が評価され、ふとん、気象衛星用のパラシュート、光ファイバーを覆うテープに使われるようになった。
 さらに、帝国劇場(東京都)のミュージカル衣装に昨年から採用されるなど、これまでの販売先は200社を超える。斎藤が実家の斎栄織物に入社した際、目標に掲げた新たな販路開拓の誓いが実現した。
 今年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)では、妖精の羽のドレスとストールが会場に展示された。国産初のジェット旅客機MRJ(三菱リージョナルジェット)や生活支援ロボットとともに、日本の最先端技術として、その名が広まった。
 県織物同業会事務局長の藤原和一(62)は「超極細の絹糸を織る斎栄織物の技術は全国でも例がない。妖精の羽の開発で川俣の存在があらためて全国に知られるようになった」と評価する。

 今年2月、イタリア・ミラノの展示会に出品した凹凸感のある絹の生地が反響を呼んだ。なめらかという絹のイメージを覆した。塩分に反応して収縮する特性を生かして生み出したという。夢は果てしない。県ハイテクプラザと共同で、さらに新たな素材づくりにも取り組んでいる。目標はしわになりにくく、家庭で洗える日常着だ。
 「絹イコール高級というイメージを打ち破り、伝統産業を現代の基幹産業として定着させる。川俣の広告塔として情報を発信し続けたい」。産地を背負う斎藤の目は貪欲に輝く。(文中敬称略)

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