東日本大震災

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(42)技を極める 世界中から医師を

スカイパークの活用について斎藤と語り合う朴(左)

 平成23年3月11日、東日本大震災。医療機器開発・販売業イービーエム社長の朴栄光(34)は米国アリゾナ州の空港にいた。出会った人が自分に興味を持ってくれるようにと、かつてパイロット免許を取得した。操縦技術を磨くための渡米だった。
 テレビに映った日本列島は津波の危険を示す赤い点滅に覆われていた。情報の少なさが不安をあおり、目の前が暗くなった。医療分野で共同研究を進める予定だった当時の福島医大付属病院副院長、横山斉(ひとし)(57)=現福島医大心臓血管外科教授=と連絡が取れたのは2日後だ。
 「すぐに福島に向かい、手伝いがしたい」と伝えた朴に、横山は「いずれ復興に向かう中で君の力が必要になる。今はまだその時じゃない」と答えた。

 帰国した朴は横山に告げられた「その時」に備え、会社の成長に全力を注いだ。独自に開発した心臓外科手術トレーニングシステムの国際標準化と、自社製品の世界でのトップシェア獲得を目標に定めた。業績を上げ、24年に各国の要人が集うスイスのダボス会議のメンバーに選ばれた。震災復興をテーマに意見交換する中で、福島の再生に貢献する決意を新たにする。
 横山との共同研究のプランを練り直した。震災と東京電力福島第一原発事故で深い傷を負った福島に世界が注目するような新たな風を吹かせたい。企画書を仕上げ、横山の元を訪れたのは25年4月。「遅いよ朴君」の言葉とは裏腹に、横山の表情には喜びがあふれていた。

 朴のアイデアに横山は目を見張った。福島市に世界中から医師が集まり、手術の技能を磨く拠点施設を設ける。市内大笹生の農道空港「ふくしまスカイパーク」を活用し、朴自身が飛行機で医師を送迎するという。
 朴は長年、医療と航空を連携させる取り組みを温めてきた。「中心市街地から車で30分の場所に空港がある都市なんて世界にもあまり例がない。交通の便が悪い地域とも最短で結べると考えた」と明かす。空港の指定管理者・NPOふくしま飛行協会に入会し、理事長の斎藤喜章(63)から構想実現に向け協力を取りつけた。
 福島市に設けた手術の訓練施設「ふくしま製造開発センターFIST」には連日、医療関係者の視察が相次いでいる。空港を使うプランが動き出すのはこれからだ。「地元の人間ではないからこそ、福島の可能性に気付いた。外部からの視点を復興に生かす」と目を輝かせる。
 横山は朴について「出会った時から自分の意見をはっきりと言う、情熱にあふれる青年だった」と振り返る。「持ち前の行動力で挑戦を続けてほしい」と期待している。(文中敬称略)

カテゴリー:明日に挑む-芽吹く福島の力

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