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(43)技を極める ITゼロから出発

後輪部分に浮かび上がった画像を解説する山寺

 「きれいでしょう」。会津若松市のIT企業「Eyes,JAPAN(アイズ・ジャパン)」社長の山寺純(48)が自転車のペダルをこぐと、後輪部分に富士山の絵が鮮やかに浮かび上がった。
 浮世絵の人物画や忍者も登場し、続いて「SOS」「Eyes,JAPAN」などの文字が流れた。車輪に取り付けた発光ダイオード(LED)でプログラムされた画像を映し出す仕組みだ。スマートフォンで手軽に図柄の切り替えができる。写真に撮ると一層鮮やかに見える。
 「鶴ケ城や飯盛山を走れば、『何だろう』と道行く観光客が目を向けるはず。写真を撮ってSNS(会員制交流サイト)で広めてくれれば、観光地のPRになる」と期待を込める。

 アイズ・ジャパンの復興プロジェクト「FUKUSHIMA Wheele(フクシマ・ホイール)」だ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響が続く観光産業を活性化したいとアイデアを絞った。
 装置付きの自転車を、地元の温泉協会などに無料で貸し出す構想を練っている。レンタサイクルとして観光客が活用すれば、会津若松の新たな名物として定着するとみている。放射線量を測定するセンサーも取り付け、データを市などに提供して安全のPRに活用してもらう。企業や商店の広告も映し、自転車の購入費用などを賄う考えだ。
 このアイデアはテレビ番組で全国に紹介された。「平成32年の東京オリンピックの会場で、自社広告を流す自転車を走らせたい」と、五輪オフィシャルスポンサーとなった2社から打診を受け協議を進めている。

 山寺は会津高を卒業後、東京での生活を経て実家に戻った。県職員になり会津大で外国人講師の通訳を務めた。インターネットが一般に普及し始めた平成7年、26歳で退職し、同大の学生とともにベンチャー企業を設立した。
 コンピュータープログラムを一から独学で学んだ。11年には鶴ケ城のコンピューターグラフィックス(CG)を制作する。25年に放映された大河ドラマ「八重の桜」のオープニングに活用され、アイズ・ジャパンの名前は一気に広まった。
 IT技術をさらに学ぼうと、米国・シリコンバレーなど海外を飛び回る日々が続く。「まさにゼロからの出発だった。熱意を持って取り組めば、世界でも認められるようになる」と言葉に力を込める。(文中敬称略)

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