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事業展開に壁(2) いびつな補助制度 再開企業の安定遠く

楢葉町でプロパンガスの供給を続ける猪狩。事業を再開した企業に対する支援に乏しいと感じている

 「事務所で経営状況を聞かせてほしい」。東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域が設定された12市町村の事業者を支援する福島相双復興官民合同チームから今年に入り、楢葉町のガス会社「ナラハプロパン」社長の猪狩昌一(42)のもとに連絡があった。
 日程調整が付かず来訪は断ったが後日、被災事業者向けの支援策をまとめた資料が送られてきた。一読して机にしまった。「いろいろな補助金を用意したと書いてあったが、うちの会社に該当するのは1つもなかった」

 国、県、民間で組織する官民合同チームは、事業者が単独で事業を再開する場合の施設整備補助金を新たに設けた。これまでの国のグループ補助金制度は複数の企業で共同事業を展開するのが交付要件で、使い勝手の悪さが指摘されてきたためだ。ただ、ナラハプロパンにとっては帰還する住民が増えない限り経営状況が改善しない苦境にあり、新たな設備投資は不要だった。
 官民合同チームの調査では、帰還して再開した事業者の約6割が「顧客の回復」または「従業員の確保」が厳しいと回答している。このため、販路開拓や人材確保、企業間のマッチングなどの支援策を用意した。猪狩は「多くの金と人を動かす製造業には有利な支援策だが、商圏が縮小して経営難にある小売業や流通業には役に立たない」と思った。
 そもそも、支援策は事業を再開しようとする企業への補助が多く、既に事業を再開しても経営が軌道に乗らない企業に対する施策に乏しい。「事業を再開してからが大変なんだ。金、金、言いたくはないが、10年後、20年後まで薄く、長く支援がないとやっていけない」。猪狩の本音だ。

 国の支援はいびつとも映る。農業分野では、新規就農者の経営が安定するまでの定着支援策として、年間最大150万円を最長5年間にわたり給付する青年就農給付金制度がある。
 一方、事業を再開した商工業者に特化した赤字補填(ほてん)制度はない。住民避難によって失われた商圏で事業を再開するにも、避難先で事務所を開くにも、経営の不安定さがついて回る。
 国も課題として認識している。復興庁は赤字補填の財源確保を財務省に掛け合ったが「一生懸命やって赤字になった人と楽して赤字になった人の区別が付かない」などと補助金の公平性が担保できないとの理由で突っぱねられている。
 東電原発被害損害賠償弁護団副事務局長で弁護士の紺野明弘(41)は「原発事故前の規模に収入が戻るまで東電には賠償支払いの義務がある」と指摘する。ただ、経営を食いつなぐ賠償金の先行きが不透明なため、「赤字補填など給付金制度を設けなければ、再開したのに倒産する事業者が出てくる」と警鐘を鳴らす。(敬称略)

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