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事業展開に壁(3) 想定外の電気代負担 必要設備導入補助なし

南相馬市にあるソーラー・アグリパークの植物工場。電気代などの経費がかさみ、佐藤は撤退を決めた

 南相馬市原町区の津波被災地に2つの大きなドームがある。南相馬ソーラー・アグリパークの植物工場だ。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの農業再生のシンボルとして市が土地を買い上げ、国の復興交付金1億1500万円を使って建設した。
 市内の農業法人泉ニューワールドが市から無償貸与を受け、平成25年3月に稼働させた。併設された太陽光発電所から電気の供給を受け、放射性物質の影響を受けにくい屋内の水耕栽培でフリルレタスやサラダ菜などを出荷してきた。原発事故の被災地ならではの植物工場として注目を集めた。
 泉ニューワールドは2年9カ月後の27年12月末に稼働を停止し、今年3月末で事業から撤退した。社長の佐藤幸信(61)は言う。「国の金で植物工場を建ててもらっても、利益が出なければ商売にはならない。ボランティアではないんだ」

 ドームの直径は27メートル、高さは5メートル、内部に直径20メートルの円形水槽がある。円の中央部に苗を据え、成長に合わせて外周部に押し出し、収穫する。通常のビニールハウスに比べて面積当たりの収量は2倍近く、土を使わないため野菜に雑菌が付かずに長持ちすると設備メーカーから説明を受けていた。
 ただ、想定外の出費が相次ぎ、収益は伸び悩んだ。主な要因は電気代だ。ドームを膨らませるために常時機械で外気を送り続け、夏は冷房、冬は暖房で室温を一定に保たなければならなかった。
 当初、電気代は月平均20万円と試算されていた。実際に稼働してみるとピーク時は月60万円に達し、月平均にしても40万円に上った。想定の2倍に当たる。単純計算で年間240万円の負担増となり、徐々に採算が合わなくなった。

 工場建設の初期投資は不要だったが、商品や資材の保管場所がなければ、従業員のトイレもなかった。工場周辺は未舗装で、雨が降ると重量のあるトラックは走行できなかった。出荷用のコンテナを運ぶフォークリフトもなかった。国や市の支援はなく、自己資金で1000万円近くを賄った。
 生産した葉物野菜は全量を大手スーパーが買い取る契約で販路の心配はなかった。しかし、単価の値上げは難しく、予想以上に膨らんだ経費分を帳消しにできなかった。収入から支出を差し引くと何も残らなくなった。
 「植物工場をやる人がいなかったから引き受けたが、予想以上に経費が膨らんだ。夢の農業ではなかった」(敬称略)

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