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事業展開に壁(4) 行政支援最初だけ 「バブルもう終わる」

農地除染のバブル後を見据え、水稲面積の拡大を目指す佐藤=南相馬市

 植物工場は農林水産省や経済産業省が平成21年から導入補助や研究開発支援に乗り出したことがきっかけとなり、全国で増えている。県内では東日本大震災と東京電力福島第一原発事故後に7つ増え、計17施設になった。ただ、「照明を使う人工光型の植物工場は電気代がかさみ、全国的にみても赤字の施設が多い」(県園芸課)のが現状だ。
 南相馬市の南相馬ソーラー・アグリパーク植物工場から撤退した農業法人泉ニューワールドも、想定を上回る電気代に経営を圧迫された。社長の佐藤幸信(61)は「ドーム型でなく通常の園芸施設で太陽光利用型だったら、照明や冷暖房の費用を抑えられ、もう少し利益を出せたかもしれない」と今になって思う。
 放射性物質の影響を受けにくい屋内の水耕栽培で農業再生の象徴をつくる-という行政が描いた絵図と現実の開きは大きかった。

 植物工場を建設した南相馬市は、佐藤から電気代や工場周辺の施設整備など維持管理費がかさんでいる事情を聞いていた。経営が圧迫されている状況を認識していたが、動けなかった。生産や出荷過程の経費は事業者負担が原則で「経営自体が赤字ではなかったため積極的に対応する状況ではなかった」(市農政課)としている。ただ、実際は赤字に転落する一歩手前だった。
 植物工場の建設費として復興交付金1億1500万円を市に交付したのは復興庁だった。交付金班の担当者は「復興交付金は市町村のまちづくりを支援するのが目的」と自治体支援を強調した上で「残念ながら復興庁に個人事業者を支援する制度はない」と弁解した。
 行政の支援は植物工場経営の「入り口」までだった。「『工場を作りましたよ、はい、貸しますよ、後はよろしく』という感じだった」。市担当者からは赤字でないなら植物工場を続けてほしいと慰留されたが、膨らみ続ける維持管理費を考え撤退を決めた。「利益が出ないなら、新たな農業のモデルにはなり得ない」

 放射性物質が付着した農地の除染事業が本格化し、佐藤は昨年から農業法人の従業員やトラクターを除染現場に出している。一時的に労働の対価は増えたが、本業の水稲で得た収入ではない。
 「復興バブルはもうすぐ終わる。問題はその後どうするかだ」。農業復興事業として注目を集めた植物工場も一種のバブルと映る。農地除染の臨時収入はいずれなくなる。水稲一本で勝負する時が農業復興の正念場と考えている。
 「おれには水稲しかない。今年は47ヘクタールだったが、将来は100ヘクタールに増やす。農業に軸足を戻す」。原発事故の風評が根強く、収穫したのは飼料米がほとんどだが、銘柄米を再び作付けし大規模営農の再生モデルとなる日を見据える。(敬称略)

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