東日本大震災

「「3.11」から5年-復興を問う」アーカイブ

  • Check

事業展開に壁(5) 工場稼働に期限 柔軟さ欠く立地補助

造成工事が急ピッチで進む川内村の田ノ入工業団地(黄色の枠内)。企業立地補助金を受けるには平成30年3月までに操業しなければならない

 国の津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金は、避難指示解除区域に進出する中小企業であれば工場の新増設費の最大3分の2を国が面倒をみる。工場立地のための初期投資や土地取得費、建物や機械設備の取得費など適用範囲が広い。経済産業省によると、9月末時点で県内に新増設する128社に補助金交付が決定した。
 東京電力福島第一原発事故に伴う避難区域が6月14日に解消された川内村には、機械器具製造業、繊維工業など4社が進出する予定で、3社は立地補助金を活用する。村産業振興課の担当者は「正直言って山間部の村に企業が来てくれるのは国の補助金のおかげだ」と明かす。
 原発事故で全村避難を余儀なくされた村を再興するには村民の帰還を促すだけでなく、村外からの定住人口も増やさなければならない。企業を誘致し雇用の場をつくるのは必須の課題で、立地補助金は渡りに舟だった。

 村は水田と山林を約15ヘクタール切り開き、初めての工業団地「田ノ入工業団地」を整備している。当初は25年4月に用地取得に入る予定だったが、土地の売却収入が財物賠償から差し引かれるかどうかの方針が東電から示されるまで動けなかった。さらに土地の相続人が北海道から四国まで点在し、交渉に時間を要した。
 村は29年3月までには工業団地を完成させようと、急ピッチで造成工事を進めている。背景には立地補助金の制度設計の壁がある。27年度までに事業採択された企業は30年3月末までに操業を開始しなければ補助金を受け取れない。万が一、造成が遅れれば1年以内に工場を建設し稼働させなければならなくなる。
 川内への進出を断念した企業もある。企業関係者は「団地の完成時期の不透明さが一番の理由」と説明している。

 企業立地補助金は補助率の高さで申請実績を上げている一方で、柔軟さを欠く制度に批判が出ている。「精算払い」が原則で、実際に操業を開始した後に補助額が決まる。「概算払い」の規定はあるが、審査が厳しく操業前の前払いはなかなか認められない。結果として、自己資金の乏しい企業は補助金を生かした進出が容易にできない仕組みとなっている。
 経産省は「補助金は経営のつなぎ資金ではない。何十年先も事業を継続できる企業でなければ復興につながらない」(地域産業基盤整備課)として、進出企業の信頼度、事業の熟度などを重視している。今後、交付要件を緩和するかどうかは「これ以上は難しい。現行制度の範囲内で対応する」としている。
 避難指示が解除された地域で続く前例のない産業再生の取り組みには次々と壁ができ、課題は形を変えていく。首都大学東京准教授の山下祐介(47)は「新たな産業や公共事業を投下すれば雇用が増えて人口が回復するとは限らず、全てが解決するわけではない。制度の枠組みや支援の在り方が実態に即していなければ全く意味が無い」と指摘している。(敬称略)=「事業展開に壁」は終わります。

カテゴリー:「3.11」から5年-復興を問う

「「3.11」から5年-復興を問う」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧