東日本大震災

「福島第一原発事故」アーカイブ

  • Check

相双地方 医療再生見通せず 国との協議平行線

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示解除が今春に相次いで予定されている中、県や関係機関は相双地方の医療体制の再構築を急いでいるが、抜本的な対策を見いだせない状況が続いている。医師と看護師ら医療従事者不足に加え、再開が困難な医療機関も出ている。医療関係者は被災地に特化した特例措置などを国に求めているが、協議はかみ合わない。

■職員補充難しく
 県によると、相双地方の病院に勤務する医師と看護師、准看護師、保健師ら看護職員の推移は【グラフ】の通り。医師は東日本大震災後に震災前の6割ほどに減った。その後、増減はあるもののほぼ横ばい状態だ。県などは背景に医療技術の維持・向上を望む医師が増える中、症例や患者の少ない被災地に人材が集まりにくい状況に陥りつつある-とみている。
 看護職員は平成26年まで回復基調だったが、27年に713人、28年に711人と2年連続で減少した。
 9病院が稼働している相馬、南相馬両市を中心とする相馬地域では特に看護職員不足が深刻だ。全国からの応援派遣が26年を境に減少に転じたのに加え、定年退職を迎えた職員の補充がままならない。南相馬市のある病院は看護職員の定年退職が続く一方で、新規採用者を確保できていない。担当者は「入院機能を維持できるか先行きが不透明だ」と明かす。
 県は30年4月に富岡町での開所を目指している「ふたば医療センター(仮称)」でも医療従事者不足を想定しており、首都圏の自治体に昨年秋、看護師らの派遣を要請した。

■再開めど立たず
 双葉地域で休止中の5病院は現時点で避難指示解除後の再開のめどが立っていない。
 富岡町の今村病院は90床を備え、地域医療の中核を担っていたが震災による建物の損傷が激しく取り壊しを決めた。建て直し費用の捻出が困難な上、震災前に約1万6000人いた町民の帰還の規模が見通せず運営継続が困難と判断した。今村諭院長は町内の町立とみおか診療所で診察に当たっており、病院を新設するかどうかは未定という。
 震災と原発事故後、双葉郡内で唯一、避難せずに診療を続けていた広野町の高野病院は院長が亡くなり、医師や管理者の確保が課題となっている。県、町、福島医大などが協議しているが、継続的な診療体制は現段階で定まっていない。

■国関与が不可欠
 医療関係者は、医師確保に向けて研究論文の作成や臨床研究に取り組める環境づくりが肝要だと指摘する。
 県は「ふたば医療センター(仮称)」にその機能を担わせたい意向だ。入院機能、二次救急医療に加え、医師による教育・研究の機能を充実させ、医療人材確保の拠点にする。浜通りの医療関係者は「被災地勤務が医師の能力向上につながる国の仕組みづくりが必要だ」と訴える。
 また、被災地の病院関係者は医療環境の改善に向けて診療報酬の一つである「入院基本料」を引き上げる特例措置を求めている。引き上げは経営面の後押しとなり、勤務者の賃金アップにつながるとみているためだ。厚生労働省も被災地医療の再生に向けて国が前面に立った支援の必要性は認めているが、特例措置の創設については「適用の規模などを精査してからでなければ可否を判断できない」として消極的な姿勢を崩していない。
 浜通りの病院で組織する東電原発事故被災病院協議会は被災地の医療再生に国の関与を引き出すため、粘り強く要望していく構えだ。

カテゴリー:福島第一原発事故

「福島第一原発事故」の最新記事

>> 一覧

東日本大震災の最新記事

>> 一覧