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「福島第一原発」第一原発凍土遮水壁 運用1年 効果は依然不透明

 福島第一原発の汚染水対策のうち、1〜4号機の建屋を囲むように地面を凍らせ、建屋への地下水流入を抑える「凍土遮水壁」は31日、運用開始から1年となる。3日には山側の未凍結区間5カ所のうち4カ所の凍結が始まり、ほぼ全面稼働した。ただ、凍土壁の効果で運用前の約400トンから約70トンまで減らせると見込んでいた1日当たりの地下水のくみ上げ量は、1月時点で平均約140トンとなっており、効果が十分発揮されていないとの指摘が出ている。

 3日に凍結を始めた4カ所は長さ計約25メートル。地盤が完全に凍るまでには数カ月かかる見通し。残る1カ所は2号機西側の約7メートル。地下水位の状況などを基に原子力規制委員会が凍結させるべきか判断する。

 凍土壁は1〜4号機の周囲約1・5キロの地中に深さ約30メートルの凍結管を埋め込んで地盤を凍らせ、建屋に入り込む地下水を遮断する。一度に凍結させると地下水位が急激に変動し、建屋地下の高濃度汚染水が漏れ出す恐れがあるため、段階的に凍結させている。

 凍土壁に関し、東電は当初、1〜2カ月程度で効果が表れると見込んでいたが、昨年5月末、約1割の土壌が十分に凍結していないことが明らかになった。土壌中に石の量が多い場所では地下水の流れが早く凍りにくくなっていると分析。セメント系の特殊な薬剤を注入し、地下水の流れを止める追加工事を行った。

 東電は「凍結する箇所が増えれば、くみ上げる地下水の量は減少するだろう」とみている。

 一方、東電は汚染水対策として、1〜3号機の溶融燃料(燃料デブリ)を冷却するための原子炉への注水量を段階的に減らしている。今月末までに1日当たり100トン程度少なくし220トン程度とする計画だ。


■トラブル相次ぐ 県、再発防止徹底求める

 福島第一原発では廃炉作業が進む一方、人為的ミスなどによるトラブルが相次ぎ、県は原因究明と再発防止の徹底を東電に申し入れている。

 昨年12月4日には2、3号機の使用済み核燃料プールで冷却機能が約6時間半にわたって停止した。東電は、通常は閉まっている冷却設備につながる配管の弁が開いており、付近を見回った社員が誤って弁に触れた人為的ミスの可能性が高いと説明した。

 翌日には3号機の燃料デブリを冷やす水を原子炉内に送るポンプが止まり、注水が約1時間にわたり停止した。作業員が幅約80センチの通路で別の作業員をよけて通ろうとした際、肘がポンプのスイッチカバーにぶつかったのが原因だという。

 相次ぐトラブルを受け、樵隆男県危機管理部長は東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者を県庁に呼び、再発防止に向けて取り組むよう申し入れた。原発周辺の自治体からは「一連のトラブルが住民に不安を与え、帰還意欲にも影響する」と懸念する声が上がった。

 このほか、昨年9月には福島第一原発5・6号機などの送電線を支える引留鉄構の保全計画が策定されていなかったことが発覚。福島第二原発では昨年11月、本県沖で発生したマグニチュード(M)7・4の地震で、3号機の使用済み核燃料プールの冷却機能が約1時間半停止した。


■「廃炉」言及なし 第二原発で国、東電

 県と県議会は福島第二原発の廃炉を国、東電に重ねて要請しているが、両者は考え方を明確にしていない。

 内堀雅雄知事は1月6日、県庁で東電の数土文夫会長、広瀬直己社長と会談。「県内原発の全基廃炉が県民の思いだ」として、改めて廃炉を求めた。これに対し、広瀬社長は「県民の声を受け止める」としながらも、廃炉にするかどうか言及しなかった。

 一方、県議会は昨年の12月定例会で、福島第二原発の廃炉を強く求める国への意見書を全会一致で可決した。「国に再三求めてきた県内全基廃炉の見通しが立たず、繰り返されるトラブルが風評払拭(ふっしょく)や住民帰還など復興の妨げになっている」と指摘。福島第二原発の廃炉判断を電気事業者任せにせず、国の責任で早期に実現するよう訴えた。県議会での県内全基廃炉を求める意見書可決は4度目となった。


■廃炉作業ルポ 近くて遠い「7メートル」 デブリ取り出し 困難さ痛感

 廃炉作業の現場を取材するため、事故発生から丸6年を迎える東京電力福島第一原発を訪れた。

 大型休憩所の屋上に上がると使用済み核燃料の取り出しに向けた準備が進む1、2、3号機が見渡せた。3号機は建屋が吹き飛び、ねじ曲がった鉄骨がむき出しだった事故直後の面影はない。放射線量を低減する遮蔽体と呼ばれる足場の設置が完了した。東電の担当者は「3つの建屋のうち作業が最も進んでいる」と強調するが、格納容器の真上で最大毎時220ミリシーベルトだった線量を低減させる取り組みは今なお続いている。平成29年度、開始予定だった取り出し作業は30年度半ばにずれ込んだ。

 2、3号機の間をバスで走行すると放射線量が毎時240マイクロシーベルトまで上昇した。がれきや機材の撤去などで昨年同時期より半分ほどに下がったというが、作業員は依然、防護服に全面マスクでの作業を余儀なくされている。

 冷温停止中の5号機の原子炉格納容器内部に入った。2月に自走式ロボットによる内部調査が行われた2号機とほぼ同じ造りになっている。防護服と全面マスクを装備し、中に進む。2号機でロボットが通ったのと同じ機器交換用のレールがすぐに見えてきた。7メートルほどの全長は実際に見ると短く感じる。「この距離さえ進めなかったのか」。炉心溶融が起きた原子炉の過酷な環境を改めて実感した。

 圧力容器の真下にある鉄製の足場は全長5メートルで、人が3人ほど入ると動きづらい。足場から底部まで深さ3メートルほどあるという。遠く感じ、溶け落ちたとされる燃料を取り出す技術開発は困難を極めるだろうと想像された。

 凍土遮水壁について説明した担当者は、1日平均約400トンあった地下水くみ上げ量が約140トンまで減少したと効果を強調した。ただ、十分に効果が発揮されていないとの指摘があるだけに、説明を素直には受け取れなかった。構内には約95万トンの汚染水が保管され、1年間で約15万トン増えている。敷地を埋め尽くそうとしている保管タンクが、汚染水対策の「決め手」が見いだせない現状を物語っていた。(本社報道部・後藤 裕章)

■県原子力対策監 角山茂章氏に聞く 放射線に強いロボ必要

 燃料デブリの取り出しは福島第一原発の廃炉作業で最大の難関とされるが、実態は事故から6年近く過ぎた今もつかめていない。角山茂章県原子力対策監(73)に取り出しに向けた展望と課題を聞いた。

 −2月には2号機原子炉建屋で一連の調査を終えた。

 「圧力容器直下にある作業用足場で燃料デブリの可能性がある堆積物の撮影に成功し、格納容器内部の推定放射線量も判明した。ただ、燃料デブリの分布や圧力容器の状態などは把握できなかった。取り出し方針を決めるには今回の結果だけでは不十分で、さらなる調査をすべきだ」

 −圧力容器直下に向かうレール付近の空間放射線量は最大毎時650シーベルトと推定された。

 「炉心溶融で生じたセシウムが高温によってガス化し、圧力容器上部側面の貫通口から圧力容器の外に漏れ出し、レール付近の配管などに付着した可能性がある。レールは圧力容器から比較的離れているにもかかわらず、レール付近の線量は圧力容器直下の足場付近と比べて高かった。今後、圧力容器付近の線量を把握する必要がある」

 −政府は今夏に1〜3号機の燃料デブリの取り出し方針を決める計画だ。

 「原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は(1)冠水工法(2)気中工法『上アクセス』(3)気中工法『横アクセス』−の3つの手法を提示している。冠水の場合、燃料デブリを砕いて引き上げる際、水で放射性物質の拡散を大幅に防ぐことができる。ただ、格納容器の上部側面には数百カ所の貫通口があり、冠水すると水が漏れる可能性が高い。このため格納容器の中間部付近まで水を浸し、燃料デブリを横側から取り出す案が浮上するはずだ。圧力容器付近にある燃料デブリは水を掛けながら処理する手法が考えられる」

 −取り出しの課題は何か。

 「燃料デブリは遠隔操作ロボットで砕き、放射線を遮蔽(しゃへい)する容器に入れた上で建屋から搬出することになるだろう。しかし、ロボットを制御する半導体は放射線に弱く、長時間の作業ができない。このため、放射線に強いロボットの開発が必要だ」

 −政府と東電の計画では、平成33年内に最初の号機で取り出しを始める予定だ。

 「建屋の老朽化が進めば周囲に放射線が漏れ出すリスクが高まる。できるだけ早く手法を決め、取り出し作業に着手しなければならない。内部調査で得られた情報を基に仮説を立て、再調査で仮説の裏付けを取るなど戦略的な対策が求められる」

 つのやま・しげあき 東京都出身。東京大理学部卒。東芝原子力研究所などを経て、平成18年から26年まで会津大理事長兼学長。25年10月に県の非常勤特別職「原子力対策監」に就いた。27年10月からは県環境創造センター所長を務めている。73歳。


■原子炉内調査 本格化

 東京電力福島第一原発事故から6年が経過する中、廃炉作業で最大の難関とされる1〜3号機からの溶融燃料(燃料デブリ)取り出しに向けた原子炉格納容器の調査が本格化している。夏には政府が取り出し手法の方針を号機ごとに決める計画だが、2号機で行ったロボット調査では燃料デブリの分布状況や量を把握できなかった。汚染水対策も先行きが不透明な状況が続くなど課題は山積している。


■第一原発2号機 燃料デブリ分布、圧力容器損傷状態... 実態把握に至らず

 東電は2月、福島第一原発2号機で燃料デブリ取り出しに向けたロボット調査を実施した。事前調査で原子炉圧力容器直下の足場付近を撮影でき、さらに状況が把握できると期待されたが、予定通りに進まなかった。

 計画では格納容器の貫通部からサソリ型の調査ロボットを投入し、長さ7・2メートルのレールを伝って圧力容器直下にある格子状の足場に到達、足場を通して格納容器底部に落ちたとみられる燃料デブリを撮影するはずだった。

 しかし、レール上に付着した厚さ最大2センチ程度の堆積物がロボットの足回りに挟まって2〜3メートルしか進めず、足場までたどりつけなかった。ケーブルを切断して回収を断念した。

 東電は調査ロボットの投入前、レールに付着した堆積物を高圧水の噴射で除去する掃除用ロボットを格納容器内に送り込んだが、カメラが故障し作業は中断した。格納容器内では空間放射線量が毎時650シーベルトとなる地点があると新たに判明、高線量の影響でカメラが動かなくなったとみられる。

 一方、伸縮式パイプを用いた撮影調査では、圧力容器直下の足場に燃料デブリの可能性がある堆積物がこびりつき、足場の一部が崩落している状況が確認された。

 政府と東電の工程表では平成33年内に最初の号機で燃料デブリの取り出しを始める計画。機器開発を進めるため、今夏に取り出し手法の方針を決め、30年度上半期に確定する予定だ。東電によると、取り出しに適した手法は各号機の燃料デブリの分布状況によって異なる。このため原子炉格納容器内の実態把握が不可欠となるが、現時点で情報は集まっていない。

 東電福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏最高責任者は2月末の記者会見で「今のままではあまりにもざっくりとした方針しかできない」と言及。調査が比較的進んでいる2号機についても判断材料が不足しており、今後、追加の調査を実施する考えを示した。


■第一原発1号機 今月中旬、ロボット投入

 東電は福島第一原発1号機の燃料デブリ取り出しに向けた調査を今月中旬にも始める。調査ロボットを炉内に投入し、圧力容器を支える筒状の基礎部分の外側に燃料デブリがあるかどうかを確認する。

 まず放射線量計や水中カメラを搭載した調査ロボットを格納容器の貫通部から投入し、1階に当たる格子状の足場に着地させる。足場の隙間からケーブルを使って線量計やカメラを地下階の水中に垂らし、燃料デブリの有無を調べる。(1)〜(5)の5カ所で調査する。

 圧力容器の基礎部分の内外は仕切られているが、人間が通行できる程の大きさの隙間が一カ所ある。格納容器の底に落下した燃料デブリが隙間を通じて外側に飛び散った可能性がある。分布状況によって取り出し手法が異なるため事前に調査する。

 1号機は宇宙線の一種「ミュー粒子」を用いた透視調査の結果、ほぼ全ての燃料が圧力容器下部を突き抜けて格納容器の底に落下したとみられている。

 3号機の調査は平成29年度の早い時期に実施する予定。格納容器内の水位は約6・5メートルと1、2号機に比べて高いため、水中遊泳型のロボットを格納容器底部に送り込む方針だ。


※東京電力福島第一原発の調査状況
 震災の津波により、運転中だった福島第一原発1〜3号機は冷却機能を失い、原子炉内の核燃料が溶け落ちた。一部は圧力容器を突き破り、格納容器下部に落下。原子炉内の機器や構造物と混じり合ったとみられるが、位置や形状は分かっていない。取り出しには内部の状況把握が必要だが、極めて強い放射線で人間は入れない。東電や原発メーカーなどは調査用ロボットを開発し、宇宙線の一種「ミュー粒子」を利用するなどして位置を推定する試みを続けている。

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