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全量検査に査定の壁 国予算確保 見通せず 農業再生(上)

県産米の全量が放射性物質検査を受けている。財源の裏付けがなく検査の継続は見通せない

 県産米に含まれる放射性セシウム濃度を調べる全量全袋検査は平成30年度以降も継続されるかどうかの見通しが立っていない。年間60億円近い検査費用の財源の裏付けがないためだ。
 県内では食品衛生法の基準値(1キロ当たり100ベクレル)を超えるコメは年々減少し、平成27、28年産米は県がこれまでに調べた約2070万点全てで基準値を下回っている。しかし、東京電力福島第一原発事故から6年が過ぎた今も県産米の風評は拭いきれていない。
 県とJA福島五連は国に対し、安全性担保のために検査の継続を求めているが、農林水産、財務両省の見解には隔たりがある。

 検査は全ての県産玄米を対象に24年8月に始まった。県やJAなどでつくる「ふくしまの恵み安全対策協議会」が主体となり、県内172カ所の検査場で調べている。年間費用のうち50億円超は検査場の借り上げ費やコメの運搬費などの維持管理費で、県が年度ごとに東電と交渉して確保した損害賠償金を充てている。現在は29年度分を交渉している。
 他の約数億円の費用は検査員の人件費や協議会運営費などの体制整備費。28年度までは内閣府からの財源を基につくった県民健康管理、原子力被害応急対策の両基金を取り崩して充てたが、底を突いた。このため29年度は農水省に財源を確保するよう求め、国の県農林水産業再生総合事業で賄えるようになった。再生総合事業は32年度まで続くが、予算は年度ごとに組まれる。仮に国が方向転換すれば30年度以降の検査費の財源を失う。
 農水相の山本有二は福島民報社のインタビューで今後の全量検査方針について「県と相談し多角的に考えていく」と述べた。安全・安心確保の方向性はJA、県と一致している。
 国からの財源確保には予算を握る財務省の査定が立ちはだかる。同省の担当者は「安全・安心の担保には検査以外に、生産工程を管理する国際規格『GAP』の認証を受けるなどの手法もある。財源は今後、必要性を見極めた上で判断する」とし、検査体制見直しの可能性を示唆する。
 本県関係国会議員の1人は「県産米の基準値超えがない中、財務省として検査費を極力削減したいのが本音だろう」と推測し、国による一方的な打ち切りを危惧する。
 省庁間で意見がかみ合わない国の縦割り行政の弊害とも映る。

 県消費者団体連絡協議会が県民1400人を対象に実施した28年度の調査では、コメの全量全袋検査を継続すべきとする回答が73.1%に上った。県幹部の1人は全ての県産米が基準値以下であることに安心感を抱き購入している消費者もいるとし「2年連続で基準値超えが出ていないからといって検査体制の見直しに入るのは拙速だ」と強調する。
 生産者からは、仮に全量検査を継続しないのであれば、安全性を周知する代替策の予算を認めるべきだとの声も出ている。JA福島五連の幹部の1人は「市場価格の下落や取引量の減少が続くうちは、国として安全性確保に必要な財源を確保すべきだ。国の本気度が問われる」と指摘している。(敬称略)

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