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手間かかり重荷に 県産米の全量全袋検査

30キロのコメ袋を抱える黒江さん。体にずしりと響く作業だ

 「何か改善策はないだろうか」。県にはここ数年、県産米の全量全袋検査の体制見直しを求める声がコメ農家から届くようになった。
 コメ袋をトラックに積んで検査場に運搬する労力が、高齢化が進む農家の重荷になっているという。県が今夏から秋にかけ、県内の生産者に対して行ったアンケート(325人回答)では全体の52%が「検査に負担を感じている」とした。
 検査が続いているから、消費者は「福島のコメは本当に安全なのか」と不安を抱くとの指摘もある。

 川俣町小綱木のコメ農家黒江忠治(61)にとって収穫の秋は憂鬱(ゆううつ)な季節になった。
 全量全袋検査は検査機器の仕様でほとんどの場合、30キロの袋単位で行われる。黒江は毎年、約30トンを収穫する。検査に備え、乾燥させた玄米を30キロごと袋に詰め、自宅の倉庫内に並べる作業を続けてきた。その数、1年で約1000袋。抱えると重みがずしりと体に響く。腰つきはふらふらになり、手の皮はすり切れる。検査に必要なバーコードシールを袋ごとに貼り付ける作業にも時間がかかる。
 検査開始当初、「県産米への風評が生じている中、安全を保証してくれるのでありがたい制度だ」と感謝していた。しかし、食品衛生法の基準値を上回る放射性セシウムが検出されていない状況を踏まえ、抽出検査に移行してほしいと望むようになった。
 南相馬市鹿島区で年間約100トンを生産する武田幸彦(30)も検査の見直しを求めている。収穫期の秋は検査場が混み合い、申し込みから検査まで1週間ほどかかる場合があるという。コメを袋に詰め、刈り取った順に自宅の倉庫に並べていく。検査日を迎えた袋を倉庫の奥から運び出し、トラックに乗せる作業で息が切れる。「全量全袋検査は原発事故後の緊急措置と言える。基準値を上回るコメが出ていないので、範囲縮小を考えるべきではないか」と指摘する。

 生産農家ばかりでなく、流通関係者からも「体制を見直していい時期に来ている」との声が上がる。
 神奈川県内の卸売業者の幹部は、これまでの検査で福島県産の安全性は流通業界内に十分に浸透したとの認識を示し、「検査がなくなっても福島の取引を続ける。もう、原発事故前の体制に戻ってもいいと思う」と語る。
 ただ、一方の声に片寄るわけにはいかない事情が検査体制見直しの現場にはある。(文中敬称略)

カテゴリー:福島第一原発事故

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