東日本大震災

【震災から7年】「新産業創出」イノベ拠点 順次開所へ

2018年3月 9日 18:00

 浜通りを新産業の先進地とする福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想の拠点となる「福島ロボットテストフィールド」(南相馬市)は2018(平成30)年度から順次開所する。2020年3月末までに全15施設が完成する見通しだ。県内では再生可能エネルギーや医療機器関連産業で海外との連携も進んでいる。東日本大震災と東京電力福島第一原発事故からの復興に向け、幅広い産業分野で企業集積や技術革新の動きが活発化している。

 イノベーション・コースト構想は実現に向けて拠点整備が進んでいる。県は構想の具現化を目指し、研究開発促進や人材育成など重点5分野の事業方針を盛り込んだ推進計画案をまとめた。2018(平成30)年度には専門部署「福島イノベーション・コースト構想推進室」を新設し体制を強化する。

 推進計画案の概要は、日本原子力研究開発機構(JAEA)との連携による廃炉分野への地元企業の参入支援、福島ロボットテストフィールドの整備と管理運営などを進める。高校などでのキャリア教育にも力を入れ、復興を担う若い人材を育てる。

 推進計画は改正福島復興再生特措法に基づき、県が国の支援などを受けるため策定する。今後は市町村の意見を聞き、国の認定を受ける。

 推進室は施設整備や人材育成などの事業を進める。ロボットなど構想の重点分野では、県と企業が連携して製品化に取り組む。若い世代が最先端技術に触れる機会をつくるほか、廃炉技術などの研究開発に取り組む大学への補助も始める。産学官連携で独自事業を展開する「一般財団法人福島イノベーション・コースト構想推進機構」は専従職員を約30〜40人を新たに採用し、組織力を強化する。これまでは県職員が機構の業務を担っていた。

■浪江に世界最大規模 水素製造工場整備へ 2020年稼働

 東京電力福島第一原発事故で被災した本県を水素の一大供給地とする国の福島新エネ社会構想に基づき、世界最大規模の水素製造工場が浪江町棚塩地区に整備される。国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が昨年8月、東芝と東北電力、液化石油ガス(LPG)大手・岩谷産業の3社による実証事業を採択し、構想が本格的に動き出した。

 工場は東北電力が浪江町に無償譲渡する旧浪江・小高原発の建設予定地に造られる。東芝はプラントを製造し、東北電力が電気系統のシステムを整備、岩谷産業が水素の貯蔵や輸送を担う。年間で燃料電池車1万台分に相当する水素をつくり、液体水素として県内外の水素ステーションに販売する。

 旧浪江・小高原発の建設予定地約128ヘクタールのうち、町が約49ヘクタールを産業団地として整備する。このうち約25ヘクタールを水素製造拠点とする計画で、今年6月末までに水素工場用地約4・5ヘクタールの造成を優先して完了させる。残りの約20ヘクタールに太陽光発電設備を整備し、水素製造に用いる電力を賄う。

 政府は昨年12月、県産水素の活用を明記した「水素基本戦略」を決定し、福島新エネ社会構想を普及拡大のモデルと位置付けた。戦略では東京五輪・パラリンピックの選手村や輸送用燃料電池バスに県産水素を利用するとしていることから、水素工場は2020年度の稼働を目指している。

 今後、県は浪江町に職員を派遣し、農地転用や造成工事の計画策定などの支援を本格化させる方針だ。

■再生可能エネルギー 企業、家庭の導入活発に

 国は2012(平成24)年から再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を導入している。太陽光や地熱、風力など再生可能エネルギーで発電された電力の全量を一定期間、同じ価格で買い取るよう大手電力会社に義務付けている。買い取り費用は電気料金に上乗せし、企業や家庭が負担している。

 経済産業省資源エネルギー庁によると、制度開始から2017年3月までに全国で新たに運転を開始した再生可能エネルギー設備容量は3万5390メガワットで制度開始前の2012年6月末の2万600メガワットから1・7倍に拡大している。県によると、2011年度は363メガワットだった県内の再生可能エネルギーの設備容量は2016年度は4倍近い1391メガワットまで伸びた。

 一方、国民負担は膨らんでいる。標準家庭の月額負担額は固定価格買い取り制度が始まった2012年度は57円だったが、2017年度は686円となった。

 電気の需給バランスや送電線の容量不足の問題も浮上している。需要変動や気象条件に左右される太陽光発電などが大量に導入されると、需給バランスが崩れて停電のリスクが高まるため、火力発電などで電力供給を調整する必要が生じる。電力需要が少ない地域で再生可能エネルギーの供給量が増加すると、送配電ネットワーク設備が容量不足となり、増強対策が必要となる。

 県は2040年度までに県内消費エネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄う目標を掲げている。達成には再生可能エネルギーの導入促進が不可欠だが、発電コスト低減など課題解決に取り組む必要がある。

■太陽光発電ルポ 福島 アポロガス 再生可能エネ普及に貢献

 福島市のアポロガスは環境に優しい太陽光発電の普及に努めている。同社が運営する、太陽光発電所と見学学習館を備えた「ふくしまさいえねパーク」(市内飯坂町)を訪ねた。

 市中心部から北西へ車で約20分。フルーツライン沿いの果樹園の向こうに、濃紺に輝く大量の太陽光発電パネルが出現した。

 3万4797平方メートルの敷地に、太陽光発電所と木造二階建ての見学学習館を備える。学習館2階の展望デッキに上がると、8640枚の太陽光発電パネルが一望できた。発電所の出力は2160キロワット。年間発電量は約230万キロワット時で、約630世帯分の消費電力に相当する。

 同社は2013(平成25)年以降、同パークを含め県内7カ所に太陽光発電所を設置した。この7カ所と屋根借り事業分などを合わせた同社発電所の出力は4211キロワット。発電した電力は東北電力に売電している。

 市内のMAXふくしま内にある同社ショールーム「アポロエナジー」は、住宅・産業用の太陽光発電システム販売を手掛けている。同社の太陽光発電システム契約件数に占める住宅用の割合は、2012年は5割ほどだったが、2017年は8〜9割に増えたという。原田健一課長(40)は「ゼロエネ住宅の普及で太陽光発電パネルを設置する新築住宅が増加している」と説明する。

 震災と原発事故から間もなく7年が経過する。国や県の再生可能エネルギー政策に伴い、太陽光発電は県内でも身近になった。取材を通じ、再生可能エネルギーの分野が復興に貢献する新産業であることを改めて実感した。(本社報道部・吉田 瑞穂)