東日本大震災

【震災から7年】「健康管理」医療体制再構築進む

2018年3月11日 01:11

 東日本大震災と東京電力福島第一原発事故から7年を迎える中、双葉郡など避難区域となった地域では医療環境の再生が徐々に進んでいる。4月には富岡町に県立ふたば医療センター付属病院が開院する。原発事故に伴う放射線被ばくの影響把握や県民の健康維持を目的とした県の「県民健康調査」は2018(平成30)年度に甲状腺検査が4巡目に入る。調査結果の蓄積や分析が進む一方、事業の在り方を巡る議論も活発化しつつある。

 原発事故に伴い設定された現旧避難指示区域がある12市町村の主な医療機関の2月末の休止・再開・新設状況は【図】の通り。原発事故前は病院や診療所、歯科診療所が100カ所あったが、診療しているのは新設も含めて28カ所となっている。

 葛尾村では震災以降に休止していた内科診療所が昨年11月に再開した。村との協定に基づき、田村医師会の医師が交代で診察に当たっている。高野病院(広野町)を運営する医療法人社団養高会は1月に「訪問看護ステーションたかの」を開所し、町内で初となる訪問看護事業を始めた。

 各町村で診療所の整備が進む一方、眼科や耳鼻咽喉科、小児科などの専門診療科を担う医療機関は不足した状況が続いている。双葉郡内で暮らす人工透析患者約30人も、いわき市や小野町など郡外に通院している。

 県は2018年度、こうした専門医療の充実を図るとともに、再開した医療機関の経営安定化に力を入れる方針だ。


■「県立ふたば医療センター付属病院」開設 2次救急医療再開 4月、富岡

 「県立ふたば医療センター付属病院」は富岡町本岡字王塚の町役場西側に開設される。24時間・365日体制で救急患者を受け入れる。最大の懸案だった双葉郡内での2次救急医療の提供が再開される。

 福島医大付属病院ふたば救急総合医療支援センター副センター長の田勢長一郎氏(67)が常勤の院長に就き、同医大付属病院の医師19人が非常勤で勤務する。

 平日の日中は4~5人、休日の日中は3~4人、夜間は2人体制となる。救急搬送や医療機関の診療時間外(夜間・休日)の来院、入院が必要な他医療機関からの紹介患者らに対応する。

 看護師約30人のほか薬剤師や放射線技師、臨床検査技師ら医療スタッフも確保した。コンピューター断層撮影装置(CT)など医療機器も配備し、福島医大と連携した遠隔画像診断も行う。

 付属病院は4月23日に診療を開始する。


■高齢者ケアにも傾注 富岡中央医院を再開した病院長 井坂晶氏に聞く

 避難指示の一部解除に伴って医療体制の再構築が急務となっている富岡町。解除に合わせて2017年4月に町内で富岡中央医院を再開した井坂晶院長に地域医療再生への考えを聞いた。

 -現在の町内の医療体制は。

 「町立とみおか診療所と富岡中央医院の二つの医療機関があり、日曜と祝日を除く週6日の診療体制が整った。ただ、歯科や眼科などまだまだ不足している。医療面への不安が帰還の阻害要因となっている可能性もある」

 -避難指示解除以降、見えてきた課題は。

 「帰還者が少なく、高齢者が大半を占めている。認知症が進むお年寄りを地域で支えることができなくなっている。薬剤師が少ないのも実情で昨年12月、県の主導で薬局開設に向けた協議会が発足した。喫緊の課題として解決に向け関係機関に働き掛けていく」

 -4月には町内に県立ふたば医療センター付属病院が開所する。

 「双葉郡の二次救急医療を担う拠点として期待している。救急や入院に対応できる環境が整うことは住民の大きな安心につながる。訪問介護など在宅医療にも力を入れてほしい」

 -県や国への要望は。

 「介護施設や薬局などを含む、複合的な医療福祉センターが必要だと考える。県や国には、地域の実情を踏まえた柔軟な対応を求めたい」

 いさか・あきら 仙台市出身。岩手医大卒。大熊町の県立大野病院などに勤めた後、1991(平成3)年に富岡中央医院を開業。町と連携し、がん検診の体制を確立した。77歳。


■帰還者の安心の砦に 県立ふたば医療センター付属病院長に就く 田勢長一郎氏に聞く

 県立ふたば医療センター付属病院の病院長に就任する田勢長一郎氏に付属病院の役割や抱負を聞いた。

 -二次救急をはじめ双葉郡の医療再生に向け、新病院はどのような役割を目指すのか。

 「救急患者に迅速に処置できる環境を整える。院内で対応困難な症例には南相馬市立総合病院や総合磐城共立病院、福島医大付属病院など域外の救急病院と連携し、適切な医療を提供する。災害時派遣医療チーム(DMAT)に入る看護師らの研修を既に始めた。診療開始に向けて職員の技能を高め、医療の質を確保する」

 -富岡消防署楢葉分署を拠点に福島医大付属病院ふたば救急総合医療支援センターの救急医療チームを率いてきた。郡内の医療の現状をどう見ているか。

 「帰還住民には高齢者が多く、重症搬送者もいる。糖尿病や高血圧など生活習慣病の予防が大きな課題だ。復興関連の作業員には労災事故や急性疾患も目立っている」

 -付属病院に救急科と内科を設ける。在宅医療にどう貢献するか。

 「近隣の診療所などから入院を受け入れる。地域包括ケアの一環として介護関係者と連携し、要請があれば看護師や医師を派遣する。健康・運動講座などに院内を開放する。自治体や関係機関と『顔の見える関係』を築きたい」

 -医療用多目的ヘリも配備される。

 「ドクターヘリと違い、緊急性の高い患者の他病院への搬送や医師、医薬品の運搬など幅広い用途に使える。郡内の大規模イベント会場に待機させるなど、安心を高める活用法を工夫したい」

 -住民にメッセージを。

 「双葉地方広域消防本部や福島医大と一体となり、救急医療を向上させる。帰還した方々の安全・安心を守る砦(とりで)を目指す」

 たせ・ちょういちろう 会津若松市出身、会津高、福島医大医学部卒。同大救命救急センターを率い、ドクターヘリ導入にも尽力した。日本航空医療学会理事、日本救急医学会評議員などを歴任。67歳。