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ことばの部屋(53) カタツムリ 堅い殻もつ丸いもの

 雨の日のあじさいの葉っぱにいるカタツムリは梅雨の風物詩の一つだ。水気が大好きなカタツムリだが、雨が降る中、葉っぱの上にじっとしていることはあまりない。雨が降ってくると、葉っぱの裏側に避難し、雨が上がると這い出してくるのだ。カタツムリも雨宿りをすることに驚いたのは、小学生の頃だった。あじさいではなく、桑の葉っぱにいる小さいカタツムリをじっと見ていて気付いたことである。

 「カタツムリ」は「カタツブリ」が変化したものだ。「カタ」は、「堅し」の「カタ」で、堅いという意味であり、「ツブリ」は、「粒」や「円らな瞳」などと同じ「ツブ」で、小さくて丸いものという意味である。堅い殻をもった小さな丸いものが、カタツムリであるというわけだ。平安時代の歌謡集『梁塵秘抄(りょうじんひしょう)』に、「舞へ舞へかたつぶり 舞はぬものならば 馬の子や牛の子に蹴させてん 踏み割らせてん」とある。こんな歌を歌いながら、昔の子どもたちは、カタツムリで遊んでいたのだろう。子どもたちに捕まえられて、殻に閉じこもったカタツムリ。そのカタツムリに「舞え舞え」「出ろ出ろ」と、はやし立てる子どもたちの様子が想像できる。「舞え舞え」は「マイマイ」、「出ろ出ろ」は「デーロ(ダイロ)」となり、これらもカタツムリの呼び名になった。子どもたちの遊びの中から生まれたネーミングである。

 「でんでんむしむし、かたつむり、おまえのあたまは...」の童謡「かたつむり」の「でんでん」は「出い出い」(出ろ出ろ)が変化したもので、これもカタツムリをはやし立てる子どもたちの歌だ。この歌が文部省唱歌として全国に広まり、「デンデンムシ」も共通語になったのだ。今でも「かたつむり」は、小学校1年生の音楽の教科書にあり、全国共通の教材として子どもたちに歌われている。
(福島市、日本語学会会員・小林初夫)

■経歴
 こばやし・はつお 相馬郡小高町(現・南相馬市)生まれ。NHK方言監修者。宮城教育大学非常勤講師。福島県警察本部指定教養講師。著書(共著)に『全国方言一覧辞典』(学研)、『都道府県別全国方言辞典』(三省堂)、『調べてみよう暮らしのことば』(ゆまに書房)など。

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