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ことばの部屋(83) 夏休みの作品 方言に取り組む児童

 2学期が始まった小学校の教室には、子どもたちが夏休みに取り組んだ作品が展示されている。図画や習字、工作や自由研究など、テーマの自由な作品が並ぶのは、この時期だけだろう。何でもありの自由な作品はそれぞれ個性的で、見ていて楽しい。そんな作品の中に、方言に関するものを2点見つけた。

 5年生の二瓶なごみさんは、方言調査票を使って祖父母に聞き取り調査を行った。調べたい言葉62語を調査項目にして、方言と使い方を質問し、返ってきた言葉を記録している。記録を見ると、祖父母とのやり取りがよくわかる。

「『末っ子』のことを何て言ったの?」
「ばっちこ」
「どんなふうに使ったの?」
「あんだのばっちこ、めんこいない」
「どういう意味?」
「あなたの末っ子、かわいいね」

 使い方も方言文なので、共通語訳が付いている。「ていねい」を見ると、「ねづい。ばっぱのしごどは、ねづいない。(おばあさんの仕事は、ていねいだ)」とある。使い方で「仕事」が平仮名になっているのは、「しごど」という発音を正確に表記しているからだ。使い方は用例として重要な情報である。調査票を見ると、この使い方がじつに生き生きとしていて、祖父母が調査に乗ってきていることがうかがえる。二瓶さんは調査を終えての感想で、「これからもいろいろな方言を教えてもらい、『方言ペラペラ』になりたい」と述べている。

 絵を描くことが好きな6年生の末永愛菜さんは、小さなスケッチブックで『方言イラスト集』を作った。「さすけね」と書いてあるページをめくると「大丈夫」とあり、困った顔をしている男の子の肩をポンとたたき、「ほのぐれのごどは、さすけね」と慰めている女の子がいる。「ぶすぐれる」のページをめくると「ふくれっ面をする」とあり、不機嫌な女の子に、「おごらっちゃがらって、いづまでもぶすぐっちぇんな」と言っている男の子がいる。どの絵もタッチが柔らかく、表情がわかりやすいうえ、会話にはすべて共通語訳が付いている。末永さんは「あとがき」で、「方言を絵にするのは楽しい。これからも描き続けたい」と述べている。

 2人とも今後も継続したいという意欲があり、うれしい限りだ。これらの作品は今後、大学の授業や先生方の研修会などで広く紹介したいと思っている。
(福島市、日本語学会会員・小林初夫)

■経歴
 こばやし・はつお 相馬郡小高町(現・南相馬市)生まれ。NHK方言監修者。宮城教育大学非常勤講師。福島県警察本部指定教養講師。著書(共著)に『全国方言一覧辞典』(学研)、『都道府県別全国方言辞典』(三省堂)、『調べてみよう暮らしのことば』(ゆまに書房)など。

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