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杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(4)6次化の新たな試みを見る 「福島モデル」の登場

 前回は多くの6次化産業の試みがなされているにもかかわらず、広がりに欠いたり、一過性になりがちだったりすることなどに触れましたが、地道な6次化をここ数年で成し遂げ、更なる拡大を進めている試みもあります。

 それは、JAふくしま未来、JA会津よつばと銀嶺食品との包括提携契約に基づく6次化へ向けてのネットワークです。この6次化の動きは今や県境を越え、茨城県のJAとの連携もスタートしました。毎年、茨城のJA関係者も見学や研修に来るようになり、「福島モデル」という名称で紹介されています。

 このモデルのスタートはJAが生産者から集めてきたコメを使って銀嶺の持つ独自の方法で麦とコメを混ぜ合わせたパンを製造・販売するシステムでした。現在はふくしま未来、会津よつばの両JAの直販所を中心に、それまであったパン売り場が全面的にリニューアルされ、「coco−la−pan(ここらぱん)」、「コメナルドベーカリー」として販売され、連日ほぼ売切れに近い状況が続いています。また、JAふくしま未来で集荷された果物の一部を加工してさまざまな種類のジャムを製造し、「未来彩(mirairo)」というブランドで売り、徐々にですが地域のお土産品・贈答品として認知されるようになってきています。ただ、これだけでは、最終的にJAの直販所を中心に売っているだけで、完全な6次化とはいえません。

 さらに、JAから集めた果実を銀嶺が自社加工ならびに協力会社などにも依頼し、プレザーブ(果物の形を残したジャム)などにして銀嶺の持つ販売ネットワークを利用し都心の大手流通業者への販売もしています。販売先を確保しつつ、第二次産業である銀嶺もJAという安定した原材料供給先を得ていること、また、規格外で生食用として出荷していない果実も利用することで、コストも全体的に抑えることができています。

 しかも、福島産のリンゴは糖分が高いため、砂糖漬けになった中国産のプレザーブよりも健康志向の消費者に受け入れられるという、いくつもの特性を上手に生かしたメリットのある6次化が実現しています。この6次化実現には多くの壁がありました。次回は実現の困難さについて取り上げます。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

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