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杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(5)福島モデルから見る課題 難しい「接点」づくり

 前回ご紹介したJAふくしま未来、JA会津よつばと銀嶺食品(福島市)が組んだ6次産業化の「福島モデル」は、今でこそ双方の幹部やスタッフがコミュニケーションを取り、新しい企画を共同でつくるくらい緊密な関係ですが、考えてみれば戦後の長きにわたって県内で商売をしている三者の関係がここ数年の間で構築されたというのは不思議な話に思えませんか。

 実際、銀嶺の主力ビジネスは現在も学校向けの給食パンの製造ですが、これまで給食費が抑えられてきたため、安価な外国産の小麦が使われてきました。また、最近まで行っていた菓子類の製造でも、小麦などの原材料は多くを卸売店から買うわけですが、大概外国産や他県産で、福島産は規格外の果実をいくつかの農家から直接買い入れるだけという程度でした。

 JA側も以前からパンやその他の農産加工品を製造・販売していたものの、技術力を伸ばし切れずに味がもう一つだったり、加工品を製造するために自ら生産ラインを作り、販売まで全部やってしまおうと苦労を重ねてきました。ただ、それほど多くの原材料を集められるわけでなく、大手流通に乗せられるだけの加工品の生産量も確保できませんでした。その結果、コスト高になってしまい、通常のスーパーでは売れないような価格の調味料などが直売場に並んでしまいがちなジレンマを抱えていました。

 異なる悩みを持つ両者が結び付く接点はなかなかない状況でしたが、この近くて遠い関係は全くの偶然に解決していきます。

 実は、著者が中央大ビジネススクールの修了生で著者のゼミ出身でもあった銀嶺食品の岡崎慎二社長を訪問した際、著者がJA改革関係の有識者会議の座長を務めている関係で講演などを一緒にして以来、親しくさせていただいていたJAふくしま未来の菅野孝志組合長に引き合わせるという機会があったのです。そこで良質の原材料を安定的に確保したい銀嶺側と、第二次産業の技術と販売チャネルが欲しかったJA側との利害が一致し、業務包括契約締結へと結び付いていきました。

 ただ、これでは偶然に事業者同士を知っている人がいないと成り立たない結論になります。次回以降、6次化のための結び付け方を考えてみましょう。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

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