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杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(9) 地域農業の視線を変える 買い手目線へ転換

 これまで福島やそのほかの日本各地に伺い、JA関係者を含め、多くの農業の現場にいる方たちと話をする機会がありましたが、そこで気が付いたことは、海外と比較しても日本の農作物の品質は相当に高いこと、また、加工設備も高い技術を持ったものを持ち合わせている場合が多いということです。
 しかし、農家の方たちからは「いいものは作っているんだけど、なかなか売るのが大変」などという声が多く聞かれます。大切なのは、どう消費者の支持をつかむかにあると思います。
 確かに、農業への賛同は農作業等を経験するなどのアクティビティー(活動)を通じて得られるのではないかということで、最近では農業体験ができる機会も数多く設けられていますが、一時的な体験は一時的な支持にはつながりますが、時がたてば薄れてしまいがちです。
 消費地で普段暮らす著者の視線から消費者の動きを観察してみると、多くの消費者は野菜を単に農作物として買うのではなく、健康やおいしさ、色彩など、感覚的価値を考慮して買っているように見受けられます。例えば桃を買う際には、産地で選ぶわけでもなく、もっと言えば、桃という果物を買うのではなく、その甘さやみずみずしさ、形、色合いを選んで買っているのではないでしょうか。
 私自身も福島に通うようになってから桃の本当の味・おいしさに気が付き、「桃」の概念が覆されました(苦笑)。また、ある広告会社の方のお話によると、ブログを検索すると「食事」という言葉のエントリー数は、「農作物」という言葉の8倍を超えるのだそうです。つまり、よくさまざまな方が言われるように、人は味を楽しみ食べることに関心があるのであって、個々の農産物への関心は限定的ではないでしょうか。
 となると、消費者目線の「食」に合わせた農業へどう向かっていくか、つまり、最近よくある「生産者の顔が見える農作物」ならぬ「消費者の顔が見える農作物」作りのために「どのように買ってもらうか」を意識した農業への転換が必要となります。
 もっとも、果実農家など商品作物系の農家の多い福島は既にその転換への素地を持っています。福島市飯坂地区などが典型的な事例になりますが、特に県内の果実農家の多くが長い間の努力の上に独自の販路を持ち、これまでも買い手の好みを意識し「消費者の顔を見る」果実作りをされてきたからです。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)=次回は5月16日に掲載=

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

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