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杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(10) 新たな福島農業 作物や加工品の核は

 前回は、消費者と生産者の農産物に対する目線が違うことを指摘しましたが、そこでは、「売る」のではなく、「買う」目線、「食べるもの」ではなく、「食べること」への意識の転換の重要さを指摘しました。
 また、ここ福島では既に上記の転換が進んだ「消費者の顔が見える農作物」作りをしている農家がいることも書きましたが、さまざまな地域を訪問すると、福島に限らず、全国でこれができている農家は確かに一般に言う「売れてる」、「もうかっている」農家である場合が多いことに気づかされます。
 そのうえ、さらに、これらの農家は、(1)消費者側と活発な交流をされている(2)(1)を通じて安定的な販売先の確保ができている(3)(2)の結果、価格競争に巻き込まれていない(もしくは、価格決定はむしろ、農家側がしている)ところが多い、という特徴があります。そのような農家は、消費者のイメージに残るコアになる商品(農作物)があり、また、その農作物の加工方法についての情報交換も盛んに行い、実際に加工販売しているところも多くあります。
 つまり、収穫して卸売市場に出したら終わりではなくて、消費者が欲しい、流通業が取り扱いたい形にするという次のステップにまで踏み込んでいるということでしょう。
 とはいっても、消費者側の交流関係の拡大などは急にできることではありません。となると、まずは、消費者の頭の中にすぐに思いつくイメージをどのように県内それぞれの農業に関して作り上げるのかが、重要でしょう。東日本大震災から7年、芸能人を起用したCMなどさまざまな方法で県内産の農産物全体の安全性や農産物そのもののおいしさをアピールしてきました。東京近辺に住む消費者の多くなら幾度もそのようなCM等を見たことがあるでしょう。
 しかし、これまでは「復興」とか県全体の農産物の安全性のアピールにはなったのですが、逆になかなか首都圏の消費者の個別の農作物に対するイメージ作りにつながってこなかったようにも思います。確かに、福島県内ではさまざまな農作物ができますから、なかなか核となる農産物や加工品を選ぶのも大変ですが、「福島(ある地域限定でもよい)の農業といえば、○○△△」という質問をしたときに、消費者と生産者が同じ言葉が出てくるようなイメージ作りとそれを浸透させる戦略が重要になってきています。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)=次回は6月13日に掲載=

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

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