特集 2018

  • Check

杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(11) 農業のリブランド(上)「ブランド論」の限界

 「福島(ある地域限定でもよい)の農業といえば、○○△△」というイメージづくりの重要性を前回取り上げました。
 このような主張をすると、読者の相当数は農産物の「ブランド化」をイメージされる方が多いように思います。実際、イメージづくりはブランド化という考え方から多額の費用を広告代理店などに支払って、ブランドづくりと称する広告戦略を打ち出す農業関係者は多くいます。
 典型的な事例は、コメのケースでしょう。正確に数えたことはないのですが、300種以上のブランド米があるはずです。一般的に特A米に対して、ブランドネームが付けられるケースが多くなっています。地域の特長を活かした生産方法で作られたおいしいお米にブランド名を付けるのはある意味当たり前でもあります。しかし、あまりの数の多さに消費者の選択を左右する有力なツールになっていないケースもあるという問題が指摘されています。
 このような点も含め、農産物のブランド化にはいくつもの誤解があると考えています。まず、ブランドをつくって商標登録しても、モノが消費者に受け入れられないと意味がありません。さらに、品質とブランドを組み合わせて考える人も多いのですが、農産物の安心安全は常識化しており、「農作物の安心安全」という言葉でネット検索すると、65万件以上もヒットするわけで特徴にはなりません。
 また、ブランド(ロゴ)づくりを進めるところも多いですが、これも要注意です。ブランドづくりとゆるキャラやロゴの作成が同時進行するケースが散見されますが、アップルで代表される世界的なブランドや、有名な新潟県魚沼のお米にはゆるキャラはなく、ブランドとの関連性はなさそうです。
 さらに、差別化のために何かを強調する形のブランドを作成しようという試みも簡単ではありません。「生産量日本一」や多種類の果実の生産というのは、知識にはなるのですが、それが消費者自身にどのようなインパクトがあることなのか、イメージが湧きにくいという問題を抱えこんでいます。加えて、農業分野も含めて強いブランドは、自らの広告よりも、メディアによる情報発信が顧客を呼ぶケースや、インスタグラムに代表されるように、顧客が顧客を呼ぶ方法で作られることが多いのです。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

「2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興」の最新記事

>> 一覧

特集 2018の最新記事

>> 一覧