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杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興(12) 農業のリブランド(下)「個性化」にも戦略を

 前回は、農作物ブランド論の誤解を取り上げましたが、つまるところ、農作物ブランドがなかなかうまくいかないのは、他地域の農作物との「違い」がはっきりしないということからきています。ただ、「違い」ということで、やみくもに「個性化」と称して特殊なものを作ればよいというわけではないでしょう。その「個性化」にも一定の戦術が必要です。
 いろいろと調べてみると、農産物の個性化で多くの消費者や企業の支持を集める取り組みはあちこちで散見されますが、以前にも書いたように、味覚等だけでは、わが国の農産物水準の高さのために明確な違いを出すことは難しく、消費者には価値が見えにくいままにとどまってしまいます。そうである以上、その他の面で個性を出していくしかありません。
 もともと、例えば京野菜などの「生産場所」の特殊性を価値に変えられているようなケース、静岡県のジャガイモやタマネギのように大産地の北海道で取れない時期を狙って、高く売れる季節にずらして個性化しているケースもあります。生産方法・栽培方法で味覚も含めた個性化を図り、ブランドを確立させ、商標登録しているわれらが福島の「南郷トマト」のような事例もあります。
 さらに、安納いもとかデコポンは厳しい糖度基準の下、その「品質基準」を満たしたものだけがそのブランドを名乗れるようになっています。
 しかし、これからの農からの六次産業化を考えていくと、最終製品のイメージを考えて、農作物の「利用シーン」や「用途」を限定するといった個性化ももっと考えられてよいのではないでしょうか。
 わが国では、加工業務用野菜の国産割合が7割を切っており、農林水産省も輸入野菜の増加からくる自給率や価格不安定の問題への懸念から、かねてよりさまざまな施策を打ってきましたが、「加工用=家計消費用には出せないもの」というイメージもあり、なかなか進んでいません。わが国でも生産された農作物の7割程度が何らかの加工を最終的に施されている以上、最終商品の質向上のためにも、質の高い加工用農作物の生産が二次産業や三次産業で望まれていることも事実です。首都圏の最終消費地や加工施設に比較的近い福島はそれらの格好の生産地となれる可能性があり、農業の大規模化等を通じた産業化の推進にもつながると思います。(中央大大学院戦略経営研究科教授・杉浦宣彦)=次回は7月11日に掲載=

カテゴリー:2018 杉浦宣彦氏の農が生み出す地域振興

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